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D'Mile|引退を考えていたものの、ラッキー・デイと組んでグラミー・プロデューサーに。そして始まったシルク・ソニック伝説。

執筆者の写真: R&B SOURCER&B SOURCE

シンガーだった母の影響で音楽制作を開始


2010年代後半には、既に15年以上楽曲を作り続けるベテランのポジションに位置していた、米ニューヨーク州ブルックリン出身の音楽プロデューサーD'MileことDernst Emile II。


ビッグ・ネーム達にヒット曲を提供し続けるHitmakaやHarmony Samuelsらとほぼ同世代ながら、彼らと比較するとやや知名度が劣りがちだったD'Mileも、2020年のグラミー賞をキッカケにその状況が一変することに。



D'Mileの成功の原点を辿ると、幼少期の恵まれた音楽環境にあったことが分かり、彼の母親はカリブ海のハイチでその歌声を響かせた名シンガーYanick Etienneで、彼の才能はまさに音楽の血筋から生まれたもの(父もプロデューサー/アレンジャーとして活躍したミュージシャン)。

Yanick Etienne
Yanick Etienne

D'Mileが幼少期の頃はベビーシッターがいなかったことから、母に連れられて多くの時間をスタジオで過ごしていたようで、スタジオ内ではこのボタンは何に使うの?など、度々エンジニアに質問をしていたとのこと。


このような環境下で育ったD'Mileは、音楽の道へ進むことが運命付けられていたかのように音楽制作に興味を持ち始め、ラジオから流れてくる曲が気に入ればその都度自分で曲を作り直したりし、また何故その曲がヒットしたかなどを分析するように。


そしてD'Mileが10代後半の年齢にさしかかる頃、自身のデモ・テープが同郷のレジェンド・グループFull Forceの手に渡り、Full Forceと共にRihanna"That La, La, La"(2005)を手がけ、プロデューサーとしての活動を本格的にスタート。


That La, La, La

Rihanna



引退を考えていたD'Mile


Rihanna"That La, La, La"を手がけた後、同年の2005年末にリリースされたMary J. Bligeのアルバム『The Breakthrough』収録曲"Gonna Breakthrough"のプロデュースしたD'Mileは、その後大ファンだったというRodney Jerkinsの弟子として、彼の元で約2年間制作を共にすることに。


Gonna Breakthrough

Mary J. Blige

Rodney Jerkinsの元で、Janet Jacksonのアルバム『Discipline』からのシングル曲"Feedback"、"LUV"など手がけ、その他にもJustin Bieber"Favorite Girl"、Joe"E.R. (Emergency Room)"などヒット曲を次々と生み出したD'Mile。


しかし、いくら有名アーティスト達の楽曲を手がけても、彼自身にスポットライトが当たることが少なく、そのことに葛藤していたD'Mileは、音楽ビジネスを辞めて引退も考えていたとのこと。


そして引退を考えるようになった葛藤はもう1つあり、それがJanet Jacksonの作品で成功した後、ポップ・ミュージックの制作が増え、R&B中心の音楽制作から少し遠ざかってしまったこと。


D'Mileの仕事量が増えてきた2010年代初頭は、Chris BrownやNe-YoがEDMに傾倒し、多くのR&Bアーティストやクリエイターが方向性を見失った、いわば「R&Bシーンの迷走期」とも言える時代であり、後の彼の作風を考えれば、D’Mile自身もこの時期に今後の活動に悩み、また創作意欲が揺らいだとしても不思議ではない話。


しかし、D'Mileにとっては「冬」となったこの時期をなんとか乗り切り、そして2016年に行われた第60回グラミー賞が大きな転機に。


'70年代ファンクを取り入れたChildish Gambinoの“Redbone”が、「Best Traditional R&B Performance」を受賞した姿を見たD’Mileは、古き良きサウンドが再び評価される時代の到来を確信し、新たな希望を抱くことに。

「これが上手くいくなら、俺がやりたいのはこのサウンドだ」

Redbone

Childish Gambino

「Rolling Stones」のインタビューにて当時の俺は、他の全ての人にうんざりしていたと語っており、そして時を同じくして、全く同じ思いでもがき苦しむアーティストがおり、それがNe-YoやKeith Sweatらの楽曲を手がけたものの、その素晴らしい才能にあまり注目が集まらなかったLucky Daye。


同じ悩みを抱えていた2人は意気投合してタッグを組み、当時の心境を「Rolling Stones」のインタビューにて以下のようにコメント。

「Lucky Dayeも辞める準備は出来ていた。だから、俺にとっても彼にとってもこれが最後のチャンスだった。『誰かに認められる為じゃない、俺たちがやりたい事をやろう』そんな想いで作った」

D'mileが全面プロデュースしたLucky Dayeのアルバム『Panited』には、2人がやりたかった時代を超越したタイムレスなオールド・ソウルを再現したサウンドを盛り込み、2017年には全て録り終えていたとのこと。


Painted

Lucky Daye

最終的に2019年にリリースされることとなった『Painted』は、2020年に行われた第62回グラミー賞にて「Best R&B Album」にノミネートされ、Lucky Dayeは全4部門にノミネート。


また、D'Mileは同グラミー賞にて「Best R&B Song」にノミネートされたH.E.R."Could've Been"も手がけており、いずれの作品も受賞まであと一歩だったものの、D'Mileの才能はグラミー賞を機に一気に脚光を浴び、音楽シーンの最前線へと躍り出ることに。


ちなみに、D'Mileは多彩なジャンルの音楽に挑戦したいと考えているものの、R&Bへの想いはやはり特別なもののようで、「Rated R&B」のインタビューでは、その情熱を次のようにコメント。

「R&Bの依頼が絶えないんだ。俺はオルタナティブ、ポップなど、あらゆるジャンルの音楽を何でもやりたいプロデューサだよ。R&Bに抵抗することはいくらでもできるけど、R&Bは俺の核であり、俺が成長して愛してきたものなんだ。R&Bは他のジャンルとは少し違う何かを俺に与えてくれるんだ」

Could've Been feat. Bryson Tiller

H.E.R.



「過去最高のプロデューサーだ」


Lucky Daye『Painted』の大成功をきっかけに、D'Mileの元には次々とトップ・アーティスト達からの制作依頼が殺到した中、あの超大物アーティストもD'Mileのサウンドの虜になり、それがBruno Mars。


Lucky Daye『Painted』に心を奪われたBruno Marsは、共通の友人であるJames Fauntleroyに連絡を取ってD'Mileと急接近。


これはコロナ・パンデミックが起こる前の出来事のようで、それから制作を共にした両者は、Bruno Marsの意向である「'70年代のサウンドをもう一度」というコンセプトを取り入れた"Leave The Door Open"を発表し、あのBruno MarsとAnderson .Paakによる新ユニットSilk Sonicが、D'Mileのサポートを受けて遂に始動。



Leave The Door Open

Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic

グラミー賞で4部門を受賞したこの"Leave The Door Open"の誕生こそ、D'Mileの才能に時代が追いついた決定的な出来事と言えそうですね。


そして、世界中が待ち望んだSilk Sonicのアルバム『An Evening With Silk Sonic』が2021年11月に発表され、アルバム収録曲の内"Put on a Smile"以外は、全てD'Mileがプロデュースを担当。


An Evening With Silk Sonic

Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic

これまでにD'Mileと幾度となく仕事を共にしてきたTy Dolla $ignは、今まで仕事をしてきた中で、過去最高のプロデューサーだとD'Mileの才能を絶賛。


決して遅咲きではないものの、自分自身の直感に従った事で生き返った実力派プロデューサーD'Mileが手がけた注目の楽曲をセレクトしました。


ちなみに、Bruno Marsが提供した事で大きな話題となった、嵐のシングル"Whenever You Call"の作詞作曲を担当したのも、このD'Mileです。

 

Roll Some Mo

Lucky Daye

アルバム『Painted』の冒頭に収録された"Roll Some Mo"。


第62回グラミー賞「Best R&B Song」「Best R&B Perfomance」の2部門にノミネート。

 

Smokin Out the Window

Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic

Silk Sonicの楽曲の中で一番最初に完成した楽曲。


日本人のヴィオラ奏者Yoshihiko Nakano氏が演奏で参加。

 

LA feat. Kendrick Lamar, Brandy, James Fauntleroy

Ty Dolla $ign

D'Mileの才能が開花する直前の2015年に、Ty Dolla $ignが発表したアルバム『Free TC』に収録。


Kendrick Lamar, Brandy, James Fauntleroyという豪華アーティスト達の共演。



Way Back feat. Snoop Dogg

TLC

2017年にリリースされたTLC最後のアルバム『TLC』からのシングル曲。


Snoop Doggを迎えた夏仕様のパーティー・ソング。

 

New Love

Victoria Monet

Ariana Grandeの親友として知られるVictoria Monet。


'90年代R&BをイメージしたスムースR&B。

 

That's On You

Joyce Wrice

米ロサンゼルスを拠点に活動する日系人シンガーJoyce Wrice。


恋の行方が見えないまま、相手の気持ちに振り回される葛藤を歌った切ないラブ・ソング。



Movin' On feat. Anderson .Paak

India Shawn

Chris Brown, Ashantiらの楽曲を手がけ、D'Mileも絶賛した女性シンガー/ソングライターIndia Shawn。


Bruno Marsの相棒Anderson .Paakがフューチャリングで参加。

 

Taboo

Sevyn Streeter

Ariana grandeの出世曲"The Way feat. Mac Miller"など、有名アーティスト達のヒット曲を手がける女性シンガー/ソングライターSevyn Streeter。


Alexander O'Nealの名曲"If You Were Here Tonight"をサンプリングした哀愁系スムースR&B。

 

Good Morning Gorgeous

Mary J. Blige

2022年リリースのアルバム『Good Morning Gorgeous』の表題曲。


D'MileとH.E.R.の2人による共同プロデュース。

 

プレイリスト公開中

D'Mileが手がけた楽曲をまとめたプレイリストを、Spotifyに公開しています。




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