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The Notorious B.I.G.の名曲「Juicy」のビートは誰が生み出したのか?Pete RockとTrakmasterz、それぞれの証言。

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 4 時間前
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The Notorious B.I.G.が残した'90年代ヒップホップの名曲「Juicy」

「Juicy」のビートの真の制作者は一体誰なのか?


'80年代に活躍したソウル・グループMtume(エムトゥーメイ)が、'83年にリリースした「Juicy Fruit」


Mtume - Juicy Fruit

全米R&Bシングル・チャートを制したこの楽曲をサンプリングしたことで大きな話題を集めたのが、The Notorious B.I.G.(ザ・ノトーリアス・B.I.G.)の代表曲「Juicy」


しかし、そのビートの誕生を巡っては、長年にわたり「ある議論」が続いており、今なお異なる証言が存在。


それは「'Juicy'のアイデアは誰のものなのか」をめぐる、異なる主張。


この曲のプロデューサーとして正式にクレジットされているのは、The Notorious B.I.G.を見出したSean "Puffy" Combs(ショーン・"パフィ"・コムズ)と、'90年代を代表するプロデューサー・チームTrakmasterzのPoke(ポーク)。

The Notorious B.I.G.を育てたSean "Puffy" Combs
Sean "Puffy" Combs

しかし、別の人物の発言により、この曲に関する論争が表面化することに。


その人物こそ、「Juicy」のリミックスを担当したPete Rock(ピート・ロック)。

'90年代を代表するヒップホップ・プロデューサーのPete Rock
Pete Rock

彼は2004年に『Wax Poetics』のインタビューで、Puffyが実質的に自分のアイデアを盗んだと発言。


Pete Rockの言い分によると、彼の自宅にPuffyらが遊びに来た際、ドラムマシンに入っていたMtumeの「Juicy Fruit」のビートを聴かせたところ、その後何の連絡もないまま、全く同じネタ使いの「Juicy」が制作され、発売されてしまったという。

「オリジナルを作ったのは俺だ。でもクレジットはもらえなかった。あいつ(Puffy)がその曲を聴いて、気づいたら世に出ていたんだ。後になってリミックスはやらせてもらったけど、俺はずっと言い続けるし、最後まで主張する。オリジナルを作ったのは俺なんだ。誰かに腹を立てているわけじゃない。ただ、正しいクレジットが欲しいだけなんだ。人の仕事を勝手に奪うのはやめてくれ。自分でやっていないなら、俺は真実を暴くだけだ」

一方、Pokeは全く異なる証言をしており、彼は2012年、「Complex」のインタビューで次のようにコメント。

「Puffが『'Juicy Fruit'は使えるネタだな』と言ったんだ。それで家に帰って曲を組み立てた。スタジオに戻るとBiggieがラップした。それで完成だ。話はそれだけさ。Pete Rockがなぜそんなことを言っているのか分からない。Puffが最初にPeteへ依頼していた可能性はある。でも思ったようなものが出来上がらなかったのかもしれない。それは俺たちのところへ来る前の話だったのかもしれない」
The Notorious B.I.G.の「Juicy」を手がけたTrakmasterzのPoke
Poke (Trakmasterz)

両者の主張は異なるものの、しかし仮にPete Rockがアイデアを先に思いついたとしても、そのメロディ自体の権利を彼が持っているわけではなく、最終的にMtume側から正式にサンプリングの許可を取り、使用料を支払ってビジネスとして成立させたのはPuffy。


法律上、著作権によって保護されるのは「具体的に形になった作品」であり、アイデアそのものは保護の対象とはならないのが原則。


そのため、Pete Rockの家でアイデアを聴いたPuffyが、プロデューサーに「あのネタでビートを組め」と指示してゼロから作り直した場合、法律的には完全に合法。


では、なぜPete Rockはこの件に強い不満を抱いているのか。


当時のヒップホップ界に限らず、誰も目を付けていない優れたサンプルを発掘し、それをいち早く形にすることは、プロデューサーとしての大きな誇りであり、その価値観こそがこの問題の根幹。


Pete Rockにとって、この一件は「自分のクリエイティブなアイデアを横取りされ、資金力や人脈を使って先にリリースされ、手柄まで奪われた」と感じる出来事だったため、要するにこれはルール違反ではなく、マナー違反の問題。


事実、Puffyは他のアーティストから「If You Had My Love」を奪い、Jennifer Lopezに強引に渡したという事例もあるため、Pete Rockの主張も単純に否定できるものではなさそう。


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そして2008年、『Wax Poetics』のインタビューでこの問題は再び取り上げられることに。

The Notorious B.I.G.の代表曲「Juicy」のアイデアは、元々自分のものだったと主張したPete Rock
Pete Rock

The Notorious B.I.G.は、当初から「Juicy」を気に入っていたのか?


『Wax Poetics』のインタビューによると、The Notorious B.I.G.自身がPete Rockに対し、「Juicy」のビートを譲ってほしいと頼んでいたという。

「これは自分のために作っているんだと伝えたら、Biggieはすぐに欲しいと言った。 『もちろんいいよ』と答えたけど、その時は深く考えていなかった。」

しかし、ここで生じるのがひとつの矛盾。


当時のヒップホップ界、特にニューヨークのストリートでは「ハードコアで、ダークで、重いドラム」こそが正義であり、ポップで誰もが踊れるようなメロディに乗ることは「セルアウトした」とみなされるリスクがあったことから、The Notorious B.I.G.は当初、「Juicy」のビートを「ダサい」と切り捨て、この曲でラップすることを断固拒否。


しかしSean "Puffy" Combsは、ストリート向けの曲だけでは、アンダーグラウンドの世界で終わると持論を展開し、またThe Notorious B.I.G.のDJであり、地元の先輩でもあったMister Ceeらも、このキャッチーな曲で一般層の心を掴み、アルバムの他の曲でハードコアなラップを聴かせれば、両方のファンを仕留められると説得。


そして周囲からの説得の結果、彼は渋々この曲をレコーディングしたとされており、これが「Juicy」誕生における一般的な見方。


これは、2009年公開の映画『Notorious』でも描かれており、劇中で最も印象的なシーンのひとつ。

このように、Pete Rockの言い分と、The Notorious B.I.G.が「嫌った」というエピソードには、決定的な矛盾が存在。


では、なぜこのような食い違いが起きているのか。


ひとつは、The Notorious B.I.G.が「お世辞」を言った可能性。


当時、Pete Rockはすでにヒップホップ界の大御所プロデューサーであり、一方のThe Notorious B.I.G.はまだ新人のラッパー。


Pete Rock & CL Smooth - They Reminisce Over You (T.R.O.Y.)

大先輩の自宅スタジオに招かれ、ビートを聴かされた際、The Notorious B.I.G.が社交辞令を言った可能性も否定できず、Pete Rockはそれを額面通りに受け取ったものの、彼の本音は違っていたというケース。


もうひとつの可能性は、Pete Rockの記憶の中で「The Notorious B.I.G.は、俺のビートを気に入っていたはずだ」と、都合よく書き換えられているケース。


実際にPuffyがアイデアを盗んだのは事実だとしても、The Notorious B.I.G.自身がどれほどそのビートを熱望していたかについては、Pete Rockの主観が入っている可能性も。


いずれにせよ、レジェンドであるPete Rockがここまで熱く語るという事実そのものが、「Juicy」が名曲である何よりの証であり、その主張自体がこの曲の歴史的価値をさらに高めたとも言えそう。


The Notorious B.I.G. - Juicy




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