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元ネタは「Between The Sheets」、インスピレーションは2Pac。The Notorious B.I.G.「Big Poppa」誕生の裏側。

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 4 分前
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「Between The Sheets」をサンプリングしたThe Notorious B.I.G.の名曲「Big Poppa」

「Between the Sheets」をサンプリングした「Big Poppa」


'94年、The Notorious B.I.G.(Biggie Smalls)がリリースした「Big Poppa」は、米東海岸ヒップホップの歴史を塗り替え、彼を不滅のアイコンへと押し上げた大名曲。


しかし、このメロウでレイドバックしたクラシックの舞台裏に隠されていたのが、ストリートの美学、緻密な商業戦略、そして宿敵との因縁が絡み合う、生々しいドラマ。


The Notorious BIG - Big Poppa

Biggieがメロウな売れ線路線を受け入れるまでには、デビュー曲「Juicy」をめぐるPuff Daddy(Diddy)との対立があり、当時、ニューヨークの冷酷な現実をリアルに描く「ハードコアなギャングスタ・ラッパー」としてのプライドを持っていたBiggieは、Mtume「Juicy Fruit」をサンプリングしたあまりにもポップな「Juicy」を激しく嫌い、レコーディングを拒否。


しかし、プロデューサーのPuff が「ラジオやクラブでかかる曲がなければ売れない」と説得。


結果として「Juicy」が狙い通りに大ヒットしたことで、BiggieはPuffの類稀なる商業的センスを深く信頼するように。


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The Notorious BIG - Juicy

この「Juicy」の勝ちパターンに完全に倣う形で、さらなる一手として確信を持って制作されたのが、The Isley Brothersの名曲「Between The Sheets」をサンプリングしたセカンド・シングル「Big Poppa」


このビートを生み出したのは、Mary J. Blige『My Life』のメイン・プロデュースを担当したChucky Thompson、そして[Bad Boy Records]黄金期を支えたNashiem Myrickの2人。


実はこのトラック、当初はBiggieではなく、ヒップホップ・グループLost BoyzのMr. Cheeksに提供される予定だったという。


当時の状況を、Nashiemは「XXL Mag」の記事で次のように回想。

「'Between the Sheets'を使いたいと言い出したのはPuffだった。『これをループさせよう』ってね。それで俺とChuckyはスタジオに入って'Big Poppa'を制作した。実は、この曲はもともとLost BoyzのMr. Cheeksに渡す予定だったんだんだ。実際、一度はLost Boyzに提供した。ところが何かあって、Puffが『あの曲を取り戻せ。返してもらえ』と言い出した。そこで別のトラックと交換することになったんだ。Lost Boyzの'Jeeps, Lex Coups, Bimaz & Benz'を覚えてるだろ?あのトラックは、もともとEasy Mo BeeがCraig Mackのために作ったものだった。'Flava In Ya Ear'に続くシングルになる予定だったけど、Craigが気に入らなかったんだ。『このビートではラップできない』とか、そんな理由だったと思う。結局、そのトラックをLost Boyzに渡す代わりに、'Big Poppa'を取り戻した。結果的に両方ともヒットしたから、いいトレードだったんじゃないかな」

Lost Boyz - Jeeps, Lex Coups, Bimaz & Benz

一方でこんな証言も。


ヒップホップのバイブルとして知られる雑誌『The Source』の編集者であり、無名時代のThe Notorious B.I.G.の才能をいち早く見出した恩人Matt Lypheは、次のようにコメント。

「あのアルバム制作について、もう一つ誤解されていることがある。それは、『PuffがBiggieのために、キャッチーなループを次々と思いついていた』というイメージだ。でも実際は違う。Biggie自身も、どんなループに乗れば面白い曲になるかをよく分かっていた。はっきり覚えているよ。Biggieが俺にこう言ったんだ。『俺は'Bonita Applebum'の上でラップする』ってね。A Tribe Called Questの'Bonita Applebum'のことだ。あの曲も'Between the Sheets'をサンプリングしている。そのアイデアを発展させたのが'Big Poppa'だった。つまり、'Between the Sheets'を使うという発想は、Biggie自身のアイデアだったんだ」

A Tribe Called Quest - Bonita Applebum (Hootie Mix)



2Pac「I Get Around」からインスピレーションを得た「Big Poppa」


「Juicy」の成功でPuff Daddyへの信頼が芽生えていたとはいえ、Biggie Smallsの中にはまだ「ハードコアでありたい」という葛藤があり、この曲のレコーディングは後回しにになっていたという。


そんなBiggieを導くため、Puffの頭の中にあったテンプレートが、前年に米西海岸のライバルである2Pac(2パック)が発表した大ヒット曲「I Get Around」


2Pac I Get Around

この曲は、西海岸特有の開放的なサウンドに乗せて、ストリートの男たちが女性たちとプールサイドで夏を楽しむ、西海岸ヒップホップ・クラシック。


そしてこの「I Get Around」の虜になっていたのが、他でもないPuff。


「ギャングスタの危険な匂いを残しつつも、メロウなファンクに乗せて女性たちとパーティーを楽しむプレイボーイ像」こそが、当時のトレンドだと直感したPuffは、Biggieの巨漢という個性を武器に、高級シャンパンを嗜む「東海岸版のラグジュアリーなプレイボーイ像」をプロデュース。


Puffの狙いは見事に的中し、この曲をきっかけにBiggieは女性ファンを爆発的に急増させ、生涯のニックネームとなる「Big Poppa」の地位を確立。

「Between The Sheets」をサンプリングしたBiggie Smallsの名曲「Big Poppa」
The Notorious B.I.G.

この曲のプロデューサーであるChucky Thompson(チャッキー・トンプソン)は、Biggieに対して次のようにコメント。

「Biggieという人間を知っていたからこそ、彼はニューヨークだけに収まる存在じゃないと思っていた。本当にユニバーサルなアーティストだった。彼のスタイルにはIce Cubeを思わせるものがあった。だから、『もっとスケールの大きな世界に乗せてみよう』と思ったんだ。そこで少しウェストコーストっぽい要素を取り入れた。ニューヨークらしさ一辺倒ではなく、少しだけ西海岸寄りの雰囲気にしてみたんだ。そしてBiggieは、そのサウンドを見事に乗りこなした。当時、俺たちはSnoopのアルバムをよく聴いていた。Dr. Dreを通じて、西海岸で何が起きているのかも分かっていた。Biggie自身もヒップホップ全体の流れを理解していた。彼にとってヒップホップはニューヨークだけのものじゃない。全米規模のカルチャーだったんだ」
「Big Poppa」を手がけたプロデューサーChucky Thompson
Chucky Thompson

しかしこの戦略は、のちに2Pacから「俺が教えた稼ぎ方と、俺のスタイルを丸パクリしやがった」と激しい怒りを買い、悲劇的な東西抗争へと繋がる火種にもなっていくことに。


2Pacは、ヒップホップ界で最も信頼されているジャーナリストの一人として知られるSwayが行ったインタビューで、次のようにコメント。

「Biggieの曲を聴いてみろ。俺は全部見てたんだ。あいつを育てたのは俺なんだから。あいつは俺の部下みたいな存在だった。俺がニューヨークへ行ってライブをするときは、'Keep Ya Head Up'を歌う前に、あいつをステージに立たせてやってた。当時、ニューヨークでもBiggieなんて誰も知らなかったからな。それに俺はあいつへこう教えた。『金を稼ぎたいなら、男に向けてラップするな。女に向けてラップしろ』ってな。女はレコードを買う。そして男は女が欲しがるものを欲しがる。だから突然、あいつは変わった。'Party and Bullshit'を聴いてみろ。あの頃のスタイルを。そこから'Big Poppa'みたいなスタイルに変わった。あれは俺の影響なんだ」
'90年代を代表するヒップホップ・レジェンドThe Notorious B.I.G.と2Pac
The Notorious B.I.G. 2Pac

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