失敗からスタートした『8701』
2001年に発表されたUsher通算3枚目のスタジオ・アルバム『8701』に収録された"U Remind Me"は、全米シングル・チャート1位を達成し、またこの曲でUsherは自身初のグラミーを受賞するなど、世界中のファンを虜にしたUsher不動の代表曲の1つ。
U Remind Me
Usher
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この曲が残した偉大なる功績から、「"U Remind Me"が『8701』からのファースト・シングル」という認識が強いものの、"U Remind Me"よりも先に同アルバムからシングル・リリースされたのが、TLC"No Scrubs"を手がけたKevin "She'kspere" Briggsプロデュースの"Pop Ya Collar"(この曲は『8701』のインターナショナル盤にのみ収録)。
・Pop Ya Collar (2000)
・U Remind Me (2001)
Pop Ya Collar
Usher
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当初、『8701』は『All About U』というアルバム名で2000年の後半にリリースが計画されており、『All About U』からのファースト・シングルとしてリリースされたのがこの"Pop Ya Collar"。
しかし、"Pop Ya Collar"を含む複数の曲が、リリース前に音楽ファイル共有サービス「Napster」上にリークされてしまい、結果的に"Pop Ya Collar"は全米シングル・チャート最高60位という結果止まりに。
ちなみに、アルバム『All About U』のプロモーション用サンプラーCDも当時作られており、この時は曲名が"Pop Ya Colla"でした。
1. Pop Ya Colla
2. Just A Friend
3. U-Turn
4. You Got It Bad
5. T.T.P.
6. If I Want
この「Napster音源流出事件」に関して、Usherは「俺の曲がこんな形でファンに届くことを望んでいなかった」とコメント。
その後、『All About U』は度々発売が延期されたものの、結果的に2001年8月7日にアルバム名を『8701』に変更してリリースされ、同アルバムは全米アルバム・チャート最高4位を記録し大ヒット。
余談ですが、アルバム名『8701』の読み方は「エイティセブン・オー・ワン」と読み、この数字はUsherが初めて公の場で歌を披露した'87年と、このアルバムがリリースされた2001年('01年)を組み合わせた数字。
『8701』の米国リリースが2001年8月7日だったことから、当初は「リリース日をアルバム名にしたのでは?」という憶測が飛び交ったものの、Usherの広報担当者によるとそれはただの偶然で、アルバム名の由来とは何の関係もないとのこと。
そんな『8701』を成功に導いたのが、この一連のゴタゴタを全て払拭したと言っても過言ではない"U Remind Me"の存在でしたが、実はこの曲は元々Usherではなく、あるR&Bグループが歌う予定の楽曲でした。
R&BグループHustlechildが歌う予定だった"U Remind Me"
不完全燃焼となった"Pop Ya Collar"の結果を見て、『8701』の制作に関して神経質になっていたのがUsherの母親で、彼女は2000年の「MTV Video Music Awards」にてある人物にラブ・コールを送っており、それがプロデューサー・デュオのJam & Lewisでした。
Usherの母親は、112のDaron Jonesが既に制作していた"Separated"のプロデュースをJam & Lewisに依頼したかったとのことで、ただJam & Lewisは基本的に自分達が制作初期段階から携わった曲のみをプロデュースすることが常だったものの、Usherと再び仕事をすることを楽しみにしていたというJam & Lewisはこのオファーを受け入れることに(Jam & Lewisは、'96年にリリースされたサウンドトラック「Kazaam」に収録されたUsherの"I Swear I’m in Love"をプロデュース)。
Separated
Usher
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結果的に、『8701』に収録された"Separated"以外の複数曲も、Jam & Lewisがプロデュースを担当することになり、"U Remind Me"もJam & Lewisが制作を請け負った楽曲の1つ。
しかし、"U Remind Me"はJam & Lewisがゼロから作り上げた楽曲ではなく、この曲はJam & Lewisと共に"U Remind Me"にプロデューサーとしてクレジットされているEdmund "Eddie Hustle" Clementという人物が生み出した楽曲。
このあまり聴き馴染みがないEdmund Clementという人物は、112やChanging Facesの楽曲を手掛けてきたプロデューサー/ソングライターで、3人組男性R&BグループHustlechildのメンバーとしても活動。
実はこの"U Remind Me"、当初Edmund ClementがHustlechild用の楽曲として作ったとのこと。
Hustlechild自体、ほぼ忘れ去られてしまったようなR&Bグループですが、2002年に[Warner Music]の傘下レーベル[Elektra]からシングル"I'm Cool"でメジャー・デビュー。
当時、日本の音楽メディア「BARKS」も「アッシャー“U Remind Me”のソングライターがレコード契約を獲得」という見出しでHustlechildのデビューを報じるなど、期待値はかなり高かった男性R&Bグループでした。
I'm Cool
Hustlechild
Hustlechildが歌う曲として"U Remind Me"が作られたものの、当時この曲をいち早く耳にしたのが『8701』のプロデューサーを務めたL.A. Reidで、この曲がヒットすると確信したL.A. Reidは、Usherのアルバムに"U Remind Me"が必要だと、Edmund Clementを説得したとのこと。
当時の様子を、「Stereogum」の記事にてEdmund Clementは次のようにコメント。
「L.A.は俺に『"U Remind Me"が欲しい。この曲は必ずNo.1のレコードになると保証する』と言った。俺は自分のチャンスを掴みたい若い野心家だったから、OKと答えたんだ」
しかし、Edmund ClementとUsherによる"U Remind Me"のレコーディングは上手くいかず、彼らが作ったバージョンは『8701』のシングルには出来ない完成度だったようで、L.A. Reidは「次のアルバムのファースト・シングルにするか、『8701』から外すか」の2択を迫ったとのこと。
しかし、この窮地を救ったのがJam & Lewisで、"U Remind Me"を修正する為にスタジオに呼ばれた彼らは、ある箇所を修正して再度レコーディングし直したとのこと。
当時の様子をJimmy Jamは次のように語っています。
「Usherは、自分が歌う曲にとてもこだわりを持っています。彼は曲と完全に繋がることができたら良いと思っています。彼が"U Remind Me"のボーカルを録音した時、何らかの理由で彼が気を散らしているような音に聴こえました。だから私達はボーカルをやり直しました」
Jimmy Jamいわく、Terry Lewisはボーカリストの魅力を引き出す術に長けており、Usherの自信を引き出すことに重きを置いていたとのこと。
結果、Jam & Lewisが手直しした"U Remind Me"はL.A. ReidからOKをもらい、L.A. Reidは「Usherが踊れること、スタイルがあることを人々は既に知っている。だから、彼が歌えることに気付いてほしいんだ」とコメントし、見事"U Remind Me"を大ヒット曲として世に送り出すことに成功。
余談ですが、L.A. ReidはJam & Lewis制作の"Separated"を聴いた際にこの曲を気に入り、Jam & Lewisに追加で曲の制作を依頼しており、その中で「Force M.D.'sの"Tender Love"に似た曲が欲しい」と具体的な指示を伝えていたようで、しかしJam & Lewisは独自の曲を作りたく、そして完成した楽曲が"Can U Help Me"だったとのことです(とは言え、"Can U Help Me"の雰囲気は"Tender Lover"にソックリですね)。
Can U Help Me
Usher
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"U Remind Me"をサンプリングするアーティスト達
Jam & Lewisがプロデュースを担当したUsherの楽曲は次の通りで、この中で全米シングル・チャート1位を記録した唯一の楽曲が"U Remind Me"でした。
・I Swear I'm in Love (1996)
・U Remind Me (2001)
・Can U Help Me (2001)
・Twork It Out (2001)
・How Do I Say (2001)
・Separated (2001)
・Truth Hurts (2004)
・Bad Girl (2004)
・Simple Things (2004)
・That's What It's Made For (2004)
・Seduction (2004)
・Monstar (2010)
・Mars vs. Venus (2010)
・Lingerie (2010)
・Pro Lover (2010)
全米シングル・チャートを制した他、第44回グラミー賞「Best Male R&B Vocal Performance」を受賞し、また2001年のビルボード年間シングル・チャートでも15位にランクインするなど、時代を創ったと言っても過言ではない2000年代R&Bの名曲中の名曲。
Billboard Year-End Hot 100 singles of 2001
1. Hanging by a Moment - Lifehouse
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11. Hit 'Em Up Style (Oops!) - Blu Cantrell
12. It Wasn't Me - Shaggy feat Rikrok
13. Stutter - Joe feat Mystikal
14. It's Been Awhile - Staind
15. U Remind Me - Usher
16. Where the Party At - Jagged Edge with Nelly
17. Angel - Shaggy feat Rayvon
18. Ride wit Me - Nelly feat City Spud
19. Follow Me - Uncle Kracker
20. Peaches & Cream - 112
「君のことを見ていると、昔好きだった子を思い出してしまうんだ。それが君と付き合えない理由さ」と、過去の恋愛を引きずって前に進めない男心を歌った1曲で、MVには当時交際していたTLCのChilliも登場して話題を集めました。
Usherに影響を受けたアーティスト達が、この曲にオマージュを捧げた楽曲を発表しており、"U Remind Me"をサンプリングした注目の楽曲をセレクトしました。
David Correy
Urm
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Saiiyan
U Remind Me feat. Kusta, Big Myke
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Derek King
OD
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Eric Bellinger
New Memories / Nobody Else Feat. ARoc
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Almondmilkhunni
Bandana
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