R&B SOURCE編集部
Usher▶︎▶︎"U Remind Me"は、あるR&Bグループの為に作られた曲だった。

失敗からスタートした『8701』
2001年に発表されたUsher通算3枚目のスタジオ・アルバム『8701』に収録された"U Remind Me"は、全米シングル・チャート1位を達成し、またこの曲でUsherは自身初のグラミーを受賞するなど、鮮明な印象として多くのファンの記憶にも残っているUsher不動の代表曲の1つ。
U Remind Me
Usher
iTunes: https://apple.co/31sfYN0
この曲が残した偉大なる功績から、「"U Remind Me"は『8701』からのファースト・シングル」という認識が強いものの、"U Remind Me"よりも先に同アルバムからシングル・リリースされた曲があり、それがTLC"No Scrubs"を手がけたKevin "She'kspere" Briggsプロデュースの"Pop Ya Collar"(この曲は『8701』のインターナショナル盤にのみ収録)。
・Pop Ya Collar (2000)
・U Remind Me (2001)
Pop Ya Collar
Usher
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当初、『8701』は『All About U』というアルバム名で2000年代後半にリリースが計画されており、『All About U』からのファースト・シングルとしてリリースされたのが"Pop Ya Collar"。
しかし、"Pop Ya Collar"を含む複数の曲が、リリース前に音楽ファイル共有サービス「Napster」上にリークされてしまい、結果的に"Pop Ya Collar"は全米シングル・チャート最高60位という結果止まり。
ちなみに、アルバム『All About U』のプロモーション用サンプラーCDも当時作られており、この時は曲名が"Pop Ya Colla"でした。
1. Pop Ya Colla
2. Just A Friend
3. U-Turn
4. You Got It Bad
5. T.T.P.
6. If I Want

この「Napster音源流出事件」に関して、Usherは「俺の曲がこんな形でファンに届くことを望んでいなかった」とコメント。
その後、『All About U』は度々発売が延期されたものの、結果的に2001年8月7日にアルバム名を『8701』に変更してリリースされ、同アルバムは全米アルバム・チャート最高4位を記録し大ヒット。
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『8701』を成功に導いたのが、この一連のゴタゴタを全て払拭したと言っても過言ではない"U Remind Me"の存在でしたが、実はこの曲は元々あるR&Bグループ用に作られた曲でした。

R&BグループHustlechildが歌う予定だった"U Remind Me"
"Pop Ya Collar"がつまづいてしまった結果を受け、『8701』の制作に関して神経質になっていたのがUsherの母親で、彼女は2000年の「MTV Video Music Awards」にてある人物にラブ・コールを送っており、それがプロデューサー・デュオのJam & Lewisでした。
Usherの母親は、112のDaron Jonesが既に制作していた"Separated"のプロデュースをJam & Lewisに請け負って欲しかったようで、Jam & Lewisは基本的に自分達が制作初期段階から携わった曲をプロデュースすることが常だったものの、Usherと仕事をすることを楽しみにしていたJam & Lewisはこのオファーを受け入れることに。
Separated
Usher
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"Separated"をきっかけに初めて接点を持ったUsherとJam & Lewisでしたが、この時期に別の場所で産声を上げようとしていたのが、後にUsherが歌うことになる"U Remind Me"でした。
この"U Remind Me"にクレジットされているプロデューサーは、Jam & LeiwsとEdmund "Eddie Hustle" Clement。
あまり聴き馴染みの無いEdmund Clementは、112やChanging Facesの楽曲を手掛けてきたプロデューサー/ソングライターで、男性R&BグループHustlechildのメンバーとして活動していた人物。
実はこの"U Remind Me"、「Stereogrum」の記事によると当初Edmund ClementがHustlechild用の楽曲として作ったとのこと。
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そもそもHustlechild自体、ほぼ忘れ去られてしまったようなR&Bグループですが、2002年に[Warner Music]の傘下レーベル[Elektra]から"I'm Cool"というシングルをリリースしてメジャー・デビュー。
当時、日本の音楽メディア「BARKS」もHustlechildのデビューを報じるなど、期待値だけはかなり高かった男性R&Bグループでした。
I'm Cool
Hustlechild
Hustlechildが歌う曲として"U Remind Me"が作られたものの、当時この曲をいち早く耳にしたのが『8701』のプロデューサーを務めたL.A. Reidで、この曲がヒットすると確信したL.A. Reidは、Usherのアルバムに"U Remind Me"が必要だと、Edmund Clementを説得したとのこと。
当時の様子を、Edmund Clementは次のように語っています。
「L.A.は俺に『"U Remind Me"が欲しい。この曲は必ずNo.1のレコードになると保証する』と言った。俺は自分のチャンスを掴みたい若い野心家だったから、OKと答えたんだ」
しかし、Edmund ClementとUsherによる"U Remind Me"のレコーディングは上手くいかず、彼らが作ったバージョンは『8701』のシングルには出来ない完成度だったようで、L.A. Reidは「次のアルバムのファースト・シングルにするか、『8701』から外すか」の2択を迫ったとのこと。
しかし、この窮地を救ったのが"Separated"で接点を持ったJam & Lewisで、"U Remind Me"を修正する為にスタジオに呼ばれた彼らは、ある箇所を修正して再度レコーディングし直したとのこと。
当時の様子をJimmy Jamは次のように語っています。
「Usherは、自分が歌う曲にとてもこだわりを持っています。彼は曲と完全に繋がることができたら良いと思っています。彼が"U Remind Me"のボーカルを録音した時、何らかの理由で彼が気を散らしているような音に聴こえました。だから私達はボーカルをやり直しました」

Jimmy Jamいわく、Terry Lewisはボーカリストの魅力を引き出す術に長けており、Usherの自信を引き出そすことに重きを置いていたとのこと。
結果、Jam & Lewisが手直しした"U Remind Me"はL.A. Reidから合格をもらい、L.A. Reidは「Usherが踊れること、スタイルがあることを人々は既に知っている。だから、彼が歌えることに気付いてほしいんだ」とコメント。
L.A. Reidの的確なコントロールがあったからこそ、"U Remind Me"は世界的ヒットを記録できたのかもしれないですね。
余談ですが、L.A. ReidはJam & Lewis制作の"Separated"を聴いた際にこの曲を気に入り、Jam & Lewisに追加で曲の制作を依頼しており、その中で「Force M.D.'sの"Tender Love"に似た曲が欲しい」と具体的な指示を伝えていたようで、しかしJam & Lewisは独自の曲を作りたく、そして完成した楽曲が"Can U Help Me"だったとのことです。
Can U Help Me
Usher
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