2Pacがコ・プロデュースした唯一のR&BシンガーJon B.
Babyfaceを迎えた'95年リリースのデビュー・シングル"Someone to Love"が、いきなり全米シングル・チャート10位と大ヒットを記録したJon B.は、Babyfaceと彼の妻Tracey Edmondsが立ち上げた[Yab Yum Records]の第1弾アーティストとしてデビューした、甘い歌声とルックスで人気を集めた正統派R&Bシンガー。
Someone to Love feat. Babyface
Jon B.
iTunes: https://apple.co/3oSylm5
デビュー後は華やかな経験ばかりとはいかず、離婚、スタジオの火事など幾多の困難を経験するも、「死ぬほどの苦痛をのぞけば、苦悩は人を強くする」と、ポジティブなマインドで音楽シーンを生き抜いた苦労人。
そんなJon B.といえば、あの2Pacがコ・プロデュースしたR&Bシンガーとしても知られており、2Pacと共演した時のことを、過去のインタビューで次のようにコメント。
「2Pacとのレコーディングは、俺にとって重要なターニング・ポイントだった。彼は音楽に全てを捧げてきたし、そんな素晴らしいアーティストが俺の曲に力を貸してくれて、俺の才能をリスペクトしてくれて、彼と同じスタジオにいるだけで幸せだった。永遠に忘れられない思い出さ」
Jon B.が2Pacと共演した"Are U Still Down?"は、2Pac没後の'97年に発表され、同シングルは全米シングル・チャート最高29位を記録。
実は、この曲のビートは元々2Pac用の楽曲として作られたとのこと。
Are U Still Down? feat. 2Pac
Jon B.
iTunes: https://apple.co/3DFykbk
"Are U Still Down?"のビートは元々2Pacの為に用意されていた
Jon B.は、2Pacとのエピソードを「VladTV」のインタビューにて次のようにコメント。
「俺の友人が2PacのMVの撮影を担当していたんだけど、彼が"How Do U Want It feat. K-Ci & JoJo"のMV撮影時に俺に電話をかけてきて、『誰が君のファンだか分かる?今直ぐここに来なきゃダメだ』って言ってきたんだ」
How Do U Want It feat. K-Ci & JoJo
2Pac
iTunes: https://apple.co/3xc0NTP
「俺は直ぐに2PacのMV撮影現場に向かい、撮影場所に着いたら軍事基地みたいに何度もバリケードを通って、IDを見せて、ボディ・チェックを受けて、鉄の探知機でチェックされて、中に入るだけで大変だったよ。ゲートでDJ Eric B.(Eric B. & Rakim)に会って、俺はその時自分の車に乗って自分のビートを聴いていたんだけど、彼が『この曲は何?』って聞いてきたから、少し車に乗ってもらってビートを聴いてもらったんだ」
「そしたら『このビートは絶対に2Pacに聴かせなきゃダメだ。曲を持っていきな』って言われて、同じビート・テープを2Pacに持っていった。2Pacと会って、他にもK-Ci & JoJo, Johnny Jacksonとか色々な人に会った。"Are U Still Down"?のビートはJohnny Jacksonが作ったけど、元々彼が2Pacの為に作った楽曲なんだ」
「"How Do U Want It"のMVの撮影現場で俺のビートを2Pacに聴いてもらって、そしたら彼は俺のビートでフリースタイル・ラップをはじめたんだ。その場所にはSway & King Techもいて、彼らが目撃者だよ。それで俺は2Pacに『一緒にスタジオに行きませんか?』って言ったんだ。その光景を見ていたK-Ci & JoJoは、これから何が起こるか分かっていたから『ほら来たぞ』っていう感じだった。いつか実現すればいいなと思っていたから、直ぐに実現することはあまり期待していなかった。でも、家に帰ってからは本当に実現するかもしれないって考えていたよ。その2週間後、2Pacから電話がかかってきてスタジオに行ったんだけど、駐車場にロールス・ロイスかベントレーが停まっていて、運転席に俺のデビュー・アルバム『Bonafide』が置いてあったんだ。それで気がついたんだ、『これは2Pacの車だ』って。あれは本当に嬉しかったし、今でもあの光景が脳裏に焼き付いている」
「それでスタジオに入って、俺のビートを聴かせてくれって言われた。その後に2Pacが『俺のビートもかけさせてくれ』って言って、その時にかけたビートが"Are U Still Down?"のビートだったんだ。俺はこのビートを聴いた瞬間に『これだ』って思った。俺がかけようとしていたビートはもういいから、これにしようって言って、直ぐに"Are U Still Down?"の制作に取り掛かった。3時間くらい作業して、曲のほとんどを仕上げた。当時、R&Bとヒップホップのコラボレーションは凄く珍しかった。Mary J. BligeとMethod Manのような例もあったし、もっと早い時期にはJody WatleyとRakimのコラボレーションもあったけど、俺と2Pacの曲は雰囲気が異なった。ラップのアグレッシブさとボーカルの柔らかさが隣り合った曲っていうのは、本当に聴いたことがなかった。"Are U Still Down?"の後に、みんなが同じことをやり始めた。この曲に惹きつけられたんだ。『俺たちがこの流れを作った』ということを言いたいわけじゃないけど、それだけ斬新だったんだ。それで完成した曲を2Pacのスタッフに聴かせたんだ。そしたら『この曲はリリース出来ない』って言われた。この時、2Pacはまだ生きていた」
何故、2Pacの生前に"Are U Still Down?"はリリース出来なかったのか?
「2Pacのスタッフは、俺たちが全く違う雰囲気を持ったアーティストということを気にしていたんだ。俺はクリーンで愛に溢れたロマンティックな雰囲気のR&Bシンガーで、反対に2Pacの生き様は、分かるよね?『どうやってこの異なる2つのバイブスを組み合わせるんだ?』って。"Someone to Love"をBabyfaceと歌ったような光景を、彼らは想像出来なかったんだ。でもそういうことじゃなくて、これは俺が本気でやったことだし、実際に2Pacは俺を気に入ってくれてコラボレーションしたんだ。『誰かに理解されるかどうかは問題じゃない。時が来たら理解されるようになる。だからこれは形にするべきなんだ。見てれば分かるよ』っていう時に、彼は亡くなってしまった」
この曲のリリースに2Pacのチームは最後まで反対していたものの、最終的には2Pacの母Afeni Shakurが、Jon B.のボーカルを許可することに。
Jon B.としては2Pacの生前にリリースしたかったであろう"Are U Still Down?"は、2Pac没後の'97年に発表されたJon B.のセカンド・アルバム『Cool Relax』に収録される形となりました。