R&B SOURCE編集部
Blackstreet|メンバー全員に嫌われた"No Diggity"のトラックは、元々2パックに提供される予定だった?
更新日:9月29日

Blackstreetのメンバー全員が嫌っていた"No Diggity"
Teddy RileyとChauncey Hannibalによって結成されたBlackstreetは、数々の実力派ボーカリスト達を招き入れたR&B史に残るオールスター・ユニット。
Michael Jacksonによって書かれた"Joy"、Myaと共演した"Take Me There feat. Mase, Blinky Blink"など、数々の名曲を残してきた残してきたBlackstreetの楽曲の中で、最も大きなヒットを記録したのが、全米シングル・チャート1位を達成した"No Digitty feat. Dr. Dre, Queen Pen"。
Blackstreet
No Diggity feat. Dr. Dre, Queen Pen
iTunes: https://apple.co/35puung
「No Diggity」とは、「No Doubt (間違いない)」と同じような意味合いで使われるスラングで、歌詞は肉食系の男達が女性を口説きにかかるナンパ・ソング。
BlackstreetとDr. Dreという世紀のコラボレーションも功を奏し、ジャンルの垣根を超えて大ヒットした"No Diggity"でしたが、実はTeddy Riley以外のBlackstreet全メンバーがこの曲を嫌っていたと、Teddy Rileyが「SoulCulture」のインタビューに答えています。
「メンバー全員が"No Diggity"を好きじゃなかった。みんなこの曲がヒットするか半信半疑だったから、俺がファースト・バースを歌った。結果的にヒットしたから、彼らは俺が言うことを信頼している。その後は、誰もがファースト・バースを歌いたがったよ」

ちなみに、"No Diggity"を制作中にこの音源をMichael Jacksonに送って聴かせたところ、Michael Jacksonは「この曲はただのヒットじゃない。スマッシュ・ヒット(大当たり)だ」と答えたそうですよ。
'96年のビルボード年間シングル・チャートでも23位にランクインした"No Diggity"でしたが、実はこの曲のビートは元々2Pacに提供される予定だったとのこと。
Billboard Year-End Hot 100 singles of 1997
1. Candle in the Wind 1997" / Something About the Way You Look Tonight - Elton John
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21. The Freshmen - The Verve Pipe
22. I Want You - Savage Garden
23. No Diggity - Blackstreet feat Dr. Dre, Queen Pen
24. I Belong to You (Every Time I See Your Face) - Rome
25. Hypnotize - The Notorious B.I.G.
26. Every Time I Close My Eyes - Babyface
27. In My Bed - Dru Hill
28. Say You'll Be There - Spice Girls
29. Do You Know (What It Takes) - Robyn
30. 4 Seasons of Loneliness - Boyz II Men

2Pacではなく、Teddy Rileyの手に渡った"No Diggity"のトラック
"No Diggity"が制作された'96年当時、2PacはDr. DreとSuge Knightが立ち上げたレーベル[Death Row Records]に所属しており、"No Diggity"のトラックはDr. Dreが作ったもの。
このビートは、当初2Pacのアルバム『All Eyez On Me』に収録される予定だったようで、しかしDr. Dreは『All Eyez On Me』のリリース前に [Death Row Records]を去ってしまい、"No Diggity"のトラックの権利はDr. Dreが保持することに。

その後Dr. DreはこのトラックをTeddy Rileyに提供し、Teddy Rileyは「HipHopDX」のインタビューにて、「Dreが[Death Row Records]を去ったから、俺にオファーが来たんだと思う。だから彼にも"No Diggity"に参加してもらった」とコメント。
ちなみに、Dr. Dreから"No Diggity"のビートを受け取ったTeddy Rileyは、当時活動休止状態だったGuyにこの曲を歌わせようと考えていたものの、メンバーのAaron Hallがこのアイデアを拒否し、最終的にBlackstreetが歌うという形に。
関連記事: Guy"Piece of My Love"の都市伝説。Aaron Hallは、イントロで「Dumb Bitch (最低のクソ女)」と歌っている?

Suge Knightからのオファーを断ったTeddy Riley
'95年8月に米ニューヨークで行われた「The Source Awards」にて、[Death Row Records]のトップSuge Knightが、[Bad Boy Records]のSean Combsを批判した発言が引き金となり、米西海岸ロサンゼルスの[Death Row Records]、そして米東海岸ニューヨークの[Bad Boy Records]を中心に勃発した「ヒップホップ東西抗争」
ヒップホップ・シーンが大荒れになっていた最中、[Death Row Records]は2Pacというスーパースターを獲得するも、Suge KnightはDr. Dreが抜けた穴の補填案を策略。
そこでSuge Knightが考えた案が、Teddy Rileyを[Death Row Records]に招き入れるというアイデア。
当時の様子を、Teddy Rileyは「HipHopDX」のインタビューにて次のようにコメント。
「俺とSugeには共通点がある。それは、俺達のメンターが共通してGene Griffinだったということ。だからギャングスタであるSugeからのオファーは怖くなかった。Sugeは俺とパートナーになりたがっていたけど、俺は彼からのオファーを断った。俺は悪の世界から来た男だけど、もうあの世界には戻らないと決めていた。彼と組むと後戻りしそうな気がしたんだ」

こんな一連のやりとりがあったことを知ってか知らずか、2Pacに提供する予定だった"No Diggity"のトラックをTeddy Rileyに提供したDr. Dre。
しかし、Dr. Dreは[Death Row Records]を去り、Dr. Dreの穴埋めとして声をかけたTeddy Rileyの獲得にも失敗したSuge Knightとしては、彼らのやりとりを見て面白いと思うはずがなく、この出来事に憤慨したSuge Knightは、Dr. Dreに対する報復曲を発表。
それが2Pacの"Toss It Up"でした。
2Pac
Toss It Up feat. Danny Boy, Aaron Hall, K-Ci & JoJo
iTunes: https://apple.co/3gqUuVy
「なんで"No Diggity"で2Pacが歌っているんだ?」
「Dreは[Death Row]を去ったな、あばよ。
ここから去ってお前はどこに行くつもりだよ?
ハードコアは上辺だけか?お前熱でもあるんじゃねえか?
もうお前のラップには誰も耳を貸さないぜ。
すぐに心変わりする奴は、ブラザー達から一番軽蔑されるんだよ」
2Pacが発表した"Toss It Up"はDr. Dreを痛烈に非難する内容で、更にSuge Knightは、Dr. DreとTeddy Rileyへの報復として、当初この"Toss It Up"は"No Diggity"のビートをほぼ丸パクリした形で制作し、Dr. Dreらの許可を得ることなく、この曲をラジオでオンエアしてしまうことに。
そして、この曲をラジオから耳にしてしまったのがTeddy Rileyで、"No Diggity"のリリース元である[Interscope Records]のトップJimmy Iovineに、すぐに電話をしたとのこと。
「おい、この曲は何だよ?ラジオで"No Diggity"をサンプリングした曲が流れてきて、しかもなんで2Pacが歌っているんだ。Jimmy, あんたが2Pacをこの曲に入れたのか?」
Jimmy Iovineも、"No Diggity"が無断でサンプリングされた事実を知らず、しかしこの電話の直後、"No Diggity"をパクった"Toss It Up"の初期バージョンがラジオから完全に消去され、Teddy Rileyは「あれはJimmyの力を知った瞬間だった」と回想。
Teddy Rileyとしては、無断で"No Diggity"が使用されたことに対して不満だったのは想像に難くないものの、そのこと以上に不満だったと思われるのは、この"Toss It Up"にAaron Hallがゲスト・ボーカルで参加していたこと。

記述の通り、Teddy Rileyは当初"No Diggity"をGuyの楽曲として発表しようとしたものの、このアイデアを拒否したのがAaron Hallだったことから、Aaron Hallの寝返りに対して、Teddy Rileyは不信感を募らせたことでしょう。
結果的に、"Toss It Up"はBlackstreet側の訴えによりビートの作り替えを余儀なくされ、2Pac没後にMakaveli名義でシングル・リリース。
"No Diggity"のトラックがきっかけで勃発したバチバチのビーフでしたが、この2曲の結果を振り返ると、第40回グラミー賞「Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocal」を受賞した"No Diggity"の圧勝という形で終わりました。
No Diggity
全米シングル・チャート
1位
全米R&B/ヒップホップ・ソングス・チャート
1位
'97年ビルボード年間シングル・チャート
23位
第40回グラミー賞
「Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocal」受賞
Toss It Up
全米シングル・チャート
チャート外
全米R&B/ヒップホップ・ソングス・チャート
最高13位
