Blackstreetのメンバー全員に嫌われた「No Diggity」は、Dr. Dreが2Pac用に作った楽曲だったのか?


Teddy Riley以外の全メンバーが嫌っていた「No Diggity」
Teddy Riley(テディ・ライリー)とChauncey Hannibalによって結成されたBlackstreet(ブラックストリート)は、数々の実力派ボーカリスト達を招き入れた、R&B史に残るオールスター・ユニット。
Michael Jacksonによって書かれた「Joy」、Myaと共演した「Take Me There feat. Mase, Blinky Blink」など、数々の名曲を残してきた残してきた彼らの楽曲の中で、最も大きなヒットを記録したのが、全米シングル・チャート1位を達成した「No Digitty feat. Dr. Dre, Queen Pen」
Blackstreet - No Diggity feat. Dr. Dre, Queen Pen
「No Diggity」とは、「No Doubt (間違いない)」と同じような意味合いで使われるスラングで、歌詞は女性を口説きにかかるナンパがテーマ。
BlackstreetとDr. Dre(ドクター・ドレー)という世紀のコラボレーションも功を奏し、ジャンルの垣根を超えて大ヒットした「No Diggity」
しかし、実はTeddy以外のBlackstreet全メンバーがこの曲を嫌っていたと、Teddyが「SoulCulture」のインタビューでコメント。
「メンバー全員が'No Diggity'を好きじゃなかった。みんなこの曲がヒットするか半信半疑だったから、俺がファースト・バースを歌った。結果的にヒットしたから、彼らは俺が言うことを信頼している。その後は、誰もがファースト・バースを歌いたがったよ」

ちなみに、「No Diggity」を制作中にこの音源をMichael Jacksonに送って聴かせたところ、彼は次のように絶賛したという。
「この曲はただのヒットじゃない。スマッシュ・ヒット(大当たり)だ」
'96年のビルボード年間シングル・チャートでも、23位にランクインするほどの大ヒット曲となった「No Diggity」
そして実は当初、Teddyはこの曲をBlackstreetではなく、Guy(ガイ)の楽曲としてリリースを検討していたとのこと。
Billboard Year-End Hot 100 singles of 1997
1. Candle in the Wind 1997" / Something About the Way You Look Tonight - Elton John
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21. The Freshmen - The Verve Pipe
22. I Want You - Savage Garden
23. No Diggity - Blackstreet feat Dr. Dre, Queen Pen
24. I Belong to You (Every Time I See Your Face) - Rome
25. Hypnotize - The Notorious B.I.G.
26. Every Time I Close My Eyes - Babyface
27. In My Bed - Dru Hill
28. Say You'll Be There - Spice Girls
29. Do You Know (What It Takes) - Robyn
30. 4 Seasons of Loneliness - Boyz II Men

Aaron Hallも「No Diggity」を拒否
「No Diggity」は、Teddy RileyとWilliam "Skylz" Stewartの2人がプロデュースを担当。
この曲は、Bill Withersの「Grandma's Hans」をサンプリングした楽曲としても知られており、Skylzがスタジオで「Grandma's Hans」を使って何かをしようとしていた時、たまたまその場に来たTeddyがそれを耳にしたことがきっかけで、「No Diggity」のトラックが生まれることに。
この時の様子を、Teddyは「Red Bull Music Academy」のインタビューにて次のように回想。
「まず何より、俺の親友だったWill Stewartに敬意を表したい。彼は2005年に亡くなってしまったんだけど、この曲の歌詞を書いたのは彼なんだ。Willとは、俺が12歳くらいの頃から知り合いだった。あるとき、Willが俺のスタジオにいて、彼はあるサンプルを持っていた。それがBill Withersの'Grandma's Hands'で、そのサンプルを聴かせてくれた。彼はそれを何度も何度も流していた。俺はスタジオの前を何度も通りながら、『このサンプルは何なんだ?なんで俺は、スタジオから出てきては、この部屋を何度も通り過ぎて、彼にそれを渡してもらいたくなってるんだ?』って思っていた。そして俺は、『OK、これだ。俺にはこのサンプルが必要だ。これを俺にくれ』と彼に伝えた。すると彼はサンプルを渡してくれて、『これに使えるものがあるんだ』と言った。それを自分の部屋に持っていって、俺はサンプルを細かく切り刻んだんだ。一音一音、ヒットごとに分けたんだ。俺はそのテンポが88 BPMだったことを覚えていた。だから、『88のままにしよう』と思ったんだ。もしスピードを上げてしまったら、テンポが変わるだけじゃなく、ピッチも変わってしまう。だから、速くしたくなかった。『細かくたくさんの断片に切って、それをループにしよう。そして、そこから組み立てていけばいい』と考えたんだ。そしてWillは何度も部屋に入ってきては、『これヤバいな。マジでイカしてる』と言っていた。それで俺は、『俺が準備できたら連絡するよ。そうしたら歌詞を書き始めよう。まず俺がメロディーを作って、それを君に渡すから』と伝えた。それで、ピアノのフレーズを聴いたときに、『これは…』って思ったんだ。ほら、ジョークを言ったあとに、オチを強調するためのお約束の決め音で、『ジャジャーン!』的な効果音ってあるだろ?『ダン、ダン、ダンダンダン、ダン、ダン』とか、『ダン、ダン、プシッ』って入る音。俺はその印象的なフックを、この曲におけるそれにしようと思ったんだ。自分の『タグ』みたいなものさ。絶対にあれを入れなきゃいけなかった。『最後に何か必要だ。ここでビートを落とすわけにはいかない。止めちゃダメだ。ずっと続いていなきゃいけない』って思っていた。そして、何かを言うときだけビートを落とす。『Baby, you're a perfect ten』の後にビートを落とす。そして『I like the way you work it』と歌う。それが、あの曲に対する俺の感覚だったんだ。新しいブルース、新しいR&B、新しいバウンスを作る。そういうものを曲に与えたかった。もちろん、誰もその意図を理解してくれなかったけどね」
Bill Withers - Grandma's Hands
しかし、完成された「No Diggity」のトラックがあまりにも斬新なサウンドだった為か、GuyのメンバーAaron Hall(アーロン・ホール)もこのオファーを拒否し、最終的にBlackstreetが歌うという形に。

ちなみにTeddyによると、「No Diggity」のリリース元である[Interscope Records]も、当初この曲がヒットするとは全く思っていなかったという。
しかし、Teddyの親友Heavy DとDr. Dreが、レーベルのトップJimmy Iovine(ジミー・アイオヴィン)を説得し、なんとかリリースする方向に話を進めたとのこと。
一方で、Heavy Dはこの曲を当初から気に入っていたようで、当時の状況をTeddyは次のようにコメント。
「Heavy Dだけは違った。あいつは俺の曲を盗もうとしていたからな。いつも俺の曲を持っていくんだ。Heavy Dが入ってくると、まるでいじめっ子みたいだったよ。『お前の弁当、よこせ』って言ってくるような感じ(笑)」

「No Diggity」のビートはDr. Dreが作り、2Pacに提供される予定だったのか?
Blackstreetの楽曲を振り返ってみて、「No Diggity」が他を凌駕するほど圧倒的な結果を残せた理由の1つは、R&Bというジャンルを飛び越えてクロスオーバー出来たこと。
その最大の要因は、客演にDr. Dreを迎えた点。
当時、DreはSuge Knight(シュグ・ナイト)と共に立ち上げたレーベル[Death Row Records]を去り、[Interscope Records]の協力の元、自身のレーベル[Aftermath Entertainment]を設立した時期。
Teddyは「HipHopDX」のインタビューにて次のようにコメント。
「Dreが[Death Row Records]を去ったから、俺にオファーが来たんだと思う。だから彼にも'No Diggity'に参加してもらった」
ちなみに、TeddyはJimmy Iovineから次のように言われたという。
「Dr. Dreがミュージック・ビデオに出たがっている」
![[Interscope Records]のトップJimmy Iovineと、プロデューサーのDr. Dre](https://static.wixstatic.com/media/8efdae_dfb8129570dd4ca5b424a1002bb38ae2~mv2.jpg/v1/fill/w_480,h_240,al_c,q_80,enc_avif,quality_auto/8efdae_dfb8129570dd4ca5b424a1002bb38ae2~mv2.jpg)
そして曲のバースをDreが歌ってくれるなら許可すると伝え、Dreが曲の冒頭でラップすることに。
「R&BのキングTeddy Riley」と、「ヒップホップのキングDr. Dre」の共演が話題にならないわけがなく、周囲の予想をよそに、歴史的大ヒットを記録した「No Diggity」
その一方で、「実はこの曲のビートはTeddyではなく、Dreが作ったのでは?」という説も。

記述の通り、「No Diggity」はTeddyとWilliam "Skylz" Stewartの2人がプロデュースを担当した楽曲。
しかし、Joe Cockerの「Woman to Woman」を使用した「California Love」や、Charles Aznavourの「Parce Que Tu Crois」を使用した「What’s The Difference」のように、どちらかというと曲調はDreのスタイルそのもの。
2Pac - California Love
もちろん、「No Diggity」の制作段階でDreの参加がおおよそ決まっていたのであれば、TeddyらはDreのスタイルに寄せたとしても、不思議ではない話。
ただ、Dreは自身がプロデュースしない楽曲でラップをすることは珍しく、それがR&Bアーティストの楽曲ともなれば更に異例のこと。
一方で、こんな証言も。
2Pacの側近的な存在だったラッパー/プロデューサーのE.D.I. Meanは、後年のインタビューでこの曲について次のように言及。
「Dreが[Death Row Records]にいた頃に、あの'No Diggity'のビートを作っていたんだよ。そしてSugeがそれを持っていた。でも、その後DreがそのビートをTeddy Rileyに売ったんだ」

もし、Dreにとって「自分がプロデュースしない楽曲ではラップをしない」というこだわりが絶対だと仮定した場合、「実はDreが'No Diggity'のトラックを手がけた」というのも、信憑性が出てくる話。

Suge Knightからのオファーを断っていたTeddy Riley
'95年8月に米ニューヨークで行われた「The Source Awards」にて、[Death Row Records]のトップSuge Knightが、[Bad Boy Records]のSean Combsを批判した発言が引き金となり、米西海岸ロサンゼルスの[Death Row Records]、そして米東海岸ニューヨークの[Bad Boy Records]を中心に勃発した「ヒップホップ東西抗争」
ヒップホップ・シーンが大荒れになっていた最中、[Death Row Records]は2Pacというスーパースターを獲得したものの、SugeはDr. Dreが抜けた穴の補填案を策略。
そこでSugeが考えた案が、Teddy Rileyを[Death Row Records]に招き入れるというアイデア。
当時の様子を、Teddyは「HipHopDX」のインタビューにて次のようにコメント。
「俺とSugeには共通点がある。それは、俺達のメンターが共通してGene Griffinだったということ(Teddyのマネージャー兼ビジネス・パートナー)。だからギャングスタであるSugeからのオファーは怖くなかった。Sugeは俺とパートナーになりたがっていたけど、俺は彼からのオファーを断った。俺は悪の世界から来た男だけど、もうあの世界には戻らないと決めていた。彼と組むと後戻りしそうな気がしたんだ」

こんな一連のやりとりがあったことを知ってか知らずか、「No Diggity」でTeddyと共演したDr. Dre。
しかし、Dreは[Death Row Records]を去り、彼の穴埋めとして声をかけたTeddyの獲得にも失敗したSugeとしては、彼らのやりとりを見て面白いと思うはずがなく、この出来事に憤慨したSugeは、Dreに対する報復曲を発表。
それが2Pacの「Toss It Up」
2Pac - Toss It Up feat. Danny Boy, Aaron Hall, K-Ci & JoJo
「なんで'No Diggity'で2Pacが歌っているんだ?」
2Pacが発表した「Toss It Up」は、Dr. Dreを痛烈に非難するディス・ソング。
「Dreは[Death Row]を去ったな、あばよ。
ここから去ってお前はどこに行くつもりだよ?
ハードコアは上辺だけか?もうお前のラップには誰も耳を貸さないぜ。
すぐに心変わりする奴は、ブラザー達から一番軽蔑されるんだよ」
そしてこの曲は当初、「No Diggity」とほぼ同じビートが使用されており、E.D.I. Meanはこの経緯について次のように言及。
「知らない人が結構多いんだけど、「Toss It Up」はもともと「No Diggity」のビートだったんだ。だから、最初の部分はほとんど同じなんだよ。どっちがどっちをパクったのかは、俺には分からない。こんなことで騒ぎを起こしたいわけじゃないけど、曲の冒頭は「No Diggity」と「Toss It Up」がほとんど同じだった。そういうことは、実際にその場にいた人間じゃないと分からないだろうね」
そしてSuge Knightは、Dreらの許可を得ることなく、この曲をラジオでオンエアしてしまうことに。
2Pac - Toss It Up (OG Version)
その後、この曲をラジオから耳にしたのがTeddyで、「No Diggity」のリリース元である[Interscope Records]のトップJimmy Iovineに、すぐに電話をしたという。
「おい、この曲は何だよ?ラジオで'No Diggity'をサンプリングした曲が流れてきて、しかもなんで2Pacが歌っているんだ。Jimmy、あんたがこの曲に2Pacを入れたのか?」
この時点では、Jimmyも「No Diggity」が無断でサンプリングされた事実を知らなかったとのこと。
しかし、この電話の直後、「No Diggity」を使用した「Toss It Up」の初期バージョンがラジオから完全に消去され、この一件についてTeddyは次のようにコメント。
「あれはJimmyの力を知った瞬間だった」
ただ、もし2Pac「Toss It Up」の初期バージョンに使われたビートが、Dreが[Death Row Records]在籍時に制作したものだったとすれば、それは「No Diggity」のビートもDreが制作したことを裏付ける、かなり有力な証拠になりそう。
一方のTeddyとしては、無断で「No Diggity」が使用されたことに対して不満だったのは想像に難くないものの、そのこと以上に不満だったと思われるのは、この「Toss It Up」にAaron Hallがゲスト・ボーカルで参加していたこと。

既述の通り、Teddyは当初「No Diggity」をGuyの楽曲として発表しようとしたものの、このアイデアを拒否したのがAaronだったことから、Aaronの寝返りに対して、Teddyは不信感を募らせたはず。
結果的に、「Toss It Up」はBlackstreet側の訴えによりビートの作り替えを余儀なくされ、2Pac没後にMakaveli名義でシングル・リリース。
「No Diggity」のトラックがきっかけで勃発したバチバチのビーフ。
そしてこの2曲の結果を振り返ると、第40回グラミー賞「Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocal」を受賞した"No Diggity"が、圧勝という形で終わることに。
No Diggity
全米シングル・チャート|1位
全米R&Bシングル・チャート|1位
'97年年間シングル・チャート|23位
第40回グラミー賞|Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocal 受賞
Toss It Up
全米シングル・チャート|チャート外
全米ヒップホップ・シングル・チャート|13位




















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