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シングル化が危ぶまれたTLCの「Creep」。MVの出来に悩んだL.A. Reidが下した決断。「この曲はシングルにしない」

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 2 時間前
  • 読了時間: 7分

シングルにならなかったかもしれないTLCの名曲「Creep」

Dallas AustinとT-Bozの実体験をベースに作られた「Creep」


TLCが'94年にリリースした歴史的名盤『CrazySexyCool』


このアルバムからのファースト・シングルとしてリリースされたのが、「浮気」をテーマに歌った「Creep」


「これで22回目の孤独、 私達はたくさんの事を乗り越えてきたよね。


彼のことを本当に愛しているけど 彼が浮気をしているのは知ってるわ。


彼の目を見ると、私をキープするために嘘ばっかりついている。


私は彼から絶対に離れないけど、 私だって何かしてるかもね。


だって私も、愛されたいし。


だから隠れて浮気するの、彼の知らない所でね」


作詞作曲したのは、TLCをデビュー時から支えてきたプロデューサーDallas Austin。


この曲の内容は、Dallas自身が過去の恋愛で経験した出来事をベースに、女性側の視点から描いた曲だという。


「Creep」を制作した時の状況を、Dallasは「Songwriter Universe」のインタビューで次のようにコメント。

「当時、俺には長く付き合っていた彼女がいたんだ。最初は友達だったんだけど、付き合い始めてから俺達の関係がおかしくなっちゃってね。俺があまり家にも帰っていなかったから、彼女との関係が上手くいかなくなっていたんだ。それから、彼女が俺の友達と浮気していたことを知った。俺の友達が書いた詩集を通じてね(笑)。彼は、彼女について詩を書いていたんだけど、それを読んだ時に『これ、どう考えても俺の彼女のことじゃん』って思ったんだ。それで彼女のところに戻って、『お前、あいつと浮気してるのか?』って聞いたら、彼女は『うん、だってあなたは全然そばにいなかったし。あなたを傷つけたくなかったけど、私は誰かに気にかけてもらいたかったの。私達は友達でもあるし、あなたのことは愛してるけど、ずっとそばにいなかったでしょ?』って言われたんだ。アトランタ(Dallasの地元)では、夜11時を過ぎてから女の子に会いに行くことを『The Late Night Creep』って呼んでいたんだ。この経験を元に、彼女が話してくれたことをそのまま曲にしたのが'Creep'なんだよ」
TLCの名曲「Creep」を手掛けたDallas Austin
Dallas Austin

そして、Dallasと同じような経験をしていたのが、TLCのメンバーT-Boz。


彼女も当時の彼に浮気されていたことから、Dallasは彼女がこの曲を歌うのに最も相応しいと考え、 「Creep」のリード・ボーカルを任せることに。


ちなみに、当時のT-Bozの彼氏は、「Creep」が自分を題材にした曲だとは知らなかったようで、T-Bozは『Billboard』のインタビューで次のようにコメント。

「今度彼に会ったらこう言ってやるわ。『この曲、あんたのことよ』ってね(笑)。誰だって、相手が自分にちゃんと向き合ってくれない時、他の誰かが優しくしてくれたり、自分が求めることをしてくれたら、そっちに惹かれてしまうものよ。そこがこの曲のインスピレーションになってるの」

Dallasは「Creep」を制作していた当時、TLCのメンバーであるChilliと交際。


そのため、曲に描かれた男女関係は2人の実体験を反映したものと思われがちながら、Dallasによれば、「Creep」で描かれているのはChilliとの関係ではなく、彼がChilliと交際する以前に経験した過去の恋愛がベースになっているという。


TLC - Creep



Left Eyeは「Creep」のコンセプトに反対


「浮気されたら、自分も浮気する」という内容が波紋を呼んだものの、TLCはデビュー曲「Ain't 2 Proud 2 Beg」の時点ですでに大胆な演出を取り入れていたため、Chilliはこの曲について次のように言及。

「'Creep'のような曲を歌うことは、私たちにとって驚きではなかった」

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しかし、この内容に誰よりも反対していたのが、TLCのメンバーLeft Eye。


彼女は「VH1」のインタビューにて次のようにコメント。

「私は'Creep'に対して100%反対だった。彼氏を裏切ることには賛成できなかった。私にとっては、忠実でいることが最も大事なの。だから'Creep'のリリースに反対したわ。私が彼氏の浮気を見つけたら、浮気して仕返しする代わりに、ただ『別れよう』って言えば良いって思っていたから」

Left Eyeが「Creep」に反対した理由のひとつは、当時の恋人Andre Risonに曲の内容を誤解されたくなかったからだという。


そして、Left Eyeは周囲にこう宣言したいたとのこと。

「この曲をリリースするなら、Music Videoでは黒いテープを口に着用する」
「Creep」のコンセプトを拒んでいたというLeft Eye
Left Eye

結果的にLeft Eyeは、「Creep」のコンセプトを受け入れ、前置きとして自らの考えを示したうえで、この曲で「浮気の結果」についてラップ。

「もし誰かが浮気をやり返して、それで自分の気分が良くなるなら、それはそれでいいと思う。でも私はそういう人間じゃない」

当初、Left Eyeは自身のラップ・パートをオリジナル・バージョンに加えようとしたものの、最終的には収録されず、「DARP Mix」「Untouchables Mix」などのリミックスに追加されることに。


TLC - Creep (DARP Mix)



MVを失敗してシングル化が危ぶまれた「Creep」


メンバー間で意見の相違が生まれた「Creep」


そして、TLCが所属していた[LaFace Records]のトップL.A. Reidもまた、全く別の理由から「Creep」に危機感を抱いており、彼はこの曲をシングルとしてリリースしないことを、一度は決断していたという。


その理由は、「Creep」のMusic Videoを制作したものの、満足のいく内容に仕上がらなかったこと。


L.A. Reidは、Craig Mack「Flavor In Ya Ear」などを手掛けた監督Craig Henryを起用し、'94年にアトランタで「Creep」のMusic Videoを撮影。


しかし、その仕上がりに満足できず、今度はTLCのデビュー・シングル「Ain’t 2 Proud 2 Beg」や「What About Your Friends?」を手掛けたLionel C. Martinを起用し、ロサンゼルスで2回目のMusic Videoを撮影。


ところが、この出来にも満足できず、2本のMusic Videoに多額の制作費を費やしたことで、L.A. Reidはかなり追い詰められていたとのこと。


その後、「Questlove Supreme」のポッドキャストに出演したL.A. Reidは、「Creep」をめぐる当時の状況について、次のようにコメント。

「'Creep'のビデオを撮ったんだけど、あまり良くなかった。『くそ、どうしよう』って思った。それでもう一度の'Creep'のビデオを撮ったんだけど、これもまた良くなかった。『やばい、俺は困ったことになった』って思ったんだ。2回もビデオを撮ったのに、どちらも良くなくて、結局その時のビデオは世に出なかった。恥ずかしかったから、シングルを変更することにした。'Creep'はもうシングルにはしない。代わりに、Jermaine Dupriが手掛けた'Kick Your Game'をシングルにしようとしたんだ」

TLC - Kick Your Game

しかし、この変更に待ったをかけたのが、[LaFace Records]の親会社である[Arista Records]のトップClive Davis。


さらに、「Creep」のプロデューサーであるDallas Austinも、自分の手掛けた曲をアルバムからのファースト・シングルとしてリリースしようとしないことに不満を抱いていたという。


L.A. Reidは続けて次のように当時を回想。

「Dallasは、自分が素晴らしいレコードを作ったことを分かっていた。だから、私は本当のことを話さなければならなかった。『実は、俺がひどいビデオを2本も作ってしまったんだ。みんなにそれを話すのが恥ずかしくて仕方がない』とね。するとCliveはただ一言、『ちゃんとやれ』と言ったんだ」
[LaFace Records]の創始者として、TLCらをサポートしたL.A. Reid
L.A. Reid

そんな中、L.A. ReidはニューヨークでSean "Puffy" Combsと一緒にいた際、完成したものの出来に満足できなかったTLCの「Creep」のMusic Videoを彼に見せたとのこと。

「俺はPuffyに、出来の悪いTLCのビデオを見せた。すると彼は『これはひどいな』っていう顔で俺を見るんだ。こっちとしては余計に落ち込むだけだったよ」

しかし、そのとき同じ部屋にあったもう一台のテレビから、Salt-N-PepaとEn Vogueによる「Whatta Man」のMusic Videoが流れ、それがTLCのものとは比べものにならないほど素晴らしく感じたという。

「あののビデオを見て、『誰が監督したんだ?』って思った。それがMatthew Rolstonだった。そこでMatthewに電話して、'Creep'のビデオを撮ってくれと頼んだんだ」

Salt-N-Pepa - Whatta Man feat. En Vogue

こうして、3度目の正直で「Creep」のミュージック・ビデオが完成。


ちなみに、2回目に撮影されたお蔵入りのMusic Videoは、2013年に流出。


このMusic Videoがボツになった理由は、曲の内容に沿ったドラマ仕立ての演出があまりにも安っぽく、業界の最前線を走るTLCにふさわしくないと判断されたためだったとのこと。


こうした様々なトラブルを経てリリースされた「Creep」だったものの、結果的にはTLC初の全米シングル・チャート1位を獲得する大ヒットを記録。


TLC - Creep (Unreleased Version)





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