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  • 執筆者の写真R&B SOURCE編集部

T-Pain▶︎▶︎オートチューンを流行らせたT-ペインが、音楽をダメにしたのか?

更新日:2021年10月3日


「お前は音楽をダメにした」

2013年のBET Awardsに向かう機内で眠りについていた時、客室乗務員から「Usherが話をしたがっている」と声をかけられて起こされたT-Pain。


同じ飛行機に乗っていたUsherと軽い話をした後、Usherが神妙な面持ちで口を開いたとのこと。


お前は音楽をダメにした。シンガーのための音楽を壊した


友人のUsherにこう指摘され、その瞬間は一体何のことを言っているのか理解出来なかったものの、Usherが何をいっているのかを気付いたT-Pain。


それが、オートチューンでした。

オートチューンを使ってブレイクしたT-Pain

このUsherとのやりとりは、Netflixで公開されているドキュメンタリー・シリーズ「This Is Pop」のインタビューにてT-Painが語った内容。

オートチューンとは、どんな声でも自在に補正することが可能な音楽ソフトで、素人の歌声でもプロ同然のような歌声に仕上げてしまう、音楽の在り方を根底から覆してしまった魔法のような音楽ソフト。


オートチューンの登場以降は、プロデューサーの仕事が「歌唱力の優れた歌手を探してくる」から「容姿の整った人を探してくる」にまで変わってしまったと言われるほど。


オートチューンを発明したのは、地震データを収集していた技術者Andy Hildebrand博士で、音楽業界からの需要が見込めるとのことで、あくまで音声ピッチの補正用としてオートチューンを発明したものの、オートチューンが全米中のレコーディング・スタジオに普及した後に様々な使われた方に発展し、オートチューンを過度に設定したところ、T-Painの代名詞ともなっている、機械的で人工的なあの「ロボット・ボイス」が偶然生まれたとのこと。


Andy Hildebrand博士は、オートチューン発明当初はこのような効果が出ることを把握していなかったようで、このオートチューンの特性を活かし、世界的大ヒットを記録したのがCherの"Believe"でした。


Cher

Believe

オートチューンが音楽シーンで取り入れられた当初は、プロデューサーやエンジニアはその存在を隠しながらオートチューン を使用し、様々なアーティストが密かにこのオートチューンを取り入れた楽曲を発表していきました。


そして、この未知なるサウンドに食い付いたのがT-Pain。


Jennifer Lopezの"If You Have My Love (Dark Child Remix)"を聴いた時に、通常のJennifer Loepzの声じゃない部分があると気付き、この謎を解明するのに1年の時間を費やし、それがオートチューンだったと突き止めた時には「斬新な曲を作れる」と確信し、涙を流すほどの嬉しさだったそうです。


ちなみに、T-PainはCher"Believe"を聞いた時は、それがオートチューンを使った加工だとは気付かなかったそうですよ。


Jennifer Lopez

If You Had My Love (Dark Child Remix)

そして、自らが虜になったオートチューンを使用し、T-Painは2005年にシングル"I'm Sprung"でデビュー。


全米シングル・チャート最高8位を記録する大ヒットとなりました、が。


オートチューンは、異質すぎて否定された。こんな変なサウンドが必要か?と反対派意見も多く、また'80年代のRoger Troutmanがきっかけで流行したボコーダーのことをみんな忘れているとも語っています。


T-Pain

I'm Sprung

T-Painが非難されたのは、T-Painが新人だったから?

"I'm Sprung"の成功後、オートチューンを使ったあの「ロボット・ボイス」を代名詞とし、T-Painは反対派意見をものともせずに次々とヒット曲を量産し、2007年リリースの"Buy U a Drank (Shawty Snappin') feat. Yung Joc"で全米シングル・チャートを制覇。


T-Pain

Buy U a Drank (Shawty Snappin') feat. Yung Joc

2000年代後半に差し掛かる頃には、最も共演したいアーティストとして各所に引っ張りだこになっていたT-Pain。


良くも悪くもオートチューンがトレンドになっていたことからT-Pain需要が急上昇しましたが、同時に共演者達はT-Painのように批判されることを恐れ、オートチューンを使うのはあくまでT-Painのみというパターンがほとんどでした。


しかし、その後Kanye Westがアルバム『808 & Heartbreak』でオートチューンを取り入れたことがきっかけで、それまで批判続きだったオートチューンに対しての評価が「創造的な発明」と一変。


ちなみに、Kanye Westはオートチューンを使用した『808 & Heartbreak』がヒットすることを確信していたとのことで、またT-Painのデビュー・アルバムもKanye Westは気に入っていたとのこと。


Kanye West

Love Lockdown

個人的な意見ですが、結局はそのツールを「誰が最初に使い、誰が流行らせるか」というところが論点な気がします。


オートチューンが、あまりにも魅力的で、あまりにも革新的だったゆえに、それをT-Painという当時はまだ名もなき新人が多用したことにより多くの注目を集めたことに対して、その状況をあまりよく思わない人もそれなりな数はいたことは想像に難くないですし、そうでなければRoger TroutmanがZappでやったようなことや、Kanye Westが後追いでオートチューンを使用したことも、T-Painと同じように批判の対象になるはず。


早い話、オートチューンを最初に流行らせたのがT-PainではなくJay-Zだったら、結果は全く違ったものになった、ただそれだけの話のようにも思えます。


結果的に、Kanye Westのアルバムでオートチューンの評価は一変したものの、オートチューンを多用しすぎたという理由で、T-Painは1人悪者にされてしまいました。

歌えることを証明して見せたT-Pain

そもそも、何故これだけオートチューンを巡ってあらゆる議論が繰り広げられたかというと、機械の力を使うことに背徳感を覚える人が多いというのが、その大きな理由の1つだと思います。


その背景には、今まで実力で評価されてきたアーティスト達が作り上げてきた正当な歴史が、オートチューンという得体の知れないソフトの登場によって、これまでの全てがまるで無かったかのように消え去ってしまうのではないか、というような恐れを、多くの人が共通して抱いてしまったのではないかと思います。


オートチューンを多用したことが仇となり、Usherにお前が音楽をダメにした」と言われて世間から非難されたT-Painでしたが、そんな彼の評価を一変させる出来事が起きました。


それが、「Tiny Desk Concert」でした。

「Tiny Desk Concert」とは、米公共ラジオ放送NPRの音楽部門の事務所にて行われる小規模のライブ・コンサートで、ライブ・ハウスに備えてあるような豪華な音響や照明などは一切なく、観客もスタッフのみというシンプルな企画。


しかし、シンプルゆえに実力を一切ごまかせないというライブ・コンサート、この「Tiny Desk Concert」にT-Painが2014年に出演。


もちろんオートチューンは使えないこの状況でT-Painのライブが行われ、このライブをきっかけにT-Painの評価が激変しました。


T-Pain

NPR Music Tiny Desk Concert

一連のオートチューン騒動により完全に自信を失っていたT-Pain。


いいところを見せなければいけない、もっと落ち着かないとなど色々な事を頭に巡らせ、歌っている間はずっと床や横などを見ていましたが、パフォーマンスを終えるとスタッフ達から大きな拍手が。


このパフォーマンス後、オンライン上でも「実は歌えたT-Pain」「力強い歌声」など、T-Painの歌唱を絶賛する声が相次ぎました。


しかし、T-Painはこの反応に腹が立ったとか。


ふざけるなと思ったよ

T-Painは音楽をダメにしたのか?

オートチューンを使用して売れっ子になったT-Painだけに、オートチューン無しでは歌えないと思ったファン心理は理解出来ますし、ただT-Painとしては、自分が作ったビートやメロディはそっちのけで、オートチューンだけのアーティストだと思われていたことに、かなり落胆した気持ちもあったと思います。


T-Painがオートチューンを使用した話題作りをしていなかったら、今のような成功があったかは分かりませんが、オートチューンを流行らせ、オートチューンによってT-Painが注目を集めたことは確かで、それと同時にその革新的な音楽ソフトを使用したことにより、音楽シーンに一時的なパニックが引き起こされたことも確か。


しかし、現代社会においてテクノロジーの進化こそ人間の進化であり、「インスタグラムに投稿する写真を加工するのは詐欺」や「身体の一部が機械化した人間のスポーツ競技記録は無効」ということと同じように、それが嫌ならオートチューンの曲は聴かなければ良い、というだけの話にも思えますが、オートチューンを巡ってT-Painに対してこれだけ非難が集まったのも、それだけT-Pain自身が音楽的才能を持った人だという裏付けでもあると思います。


「This Is Pop」内でT-Painも語っているように、T-Painがオートチューンを使用したのが時期早々だったのかなとも思えますし、同じく動画内でT-Painが語っているように、俺はオートチューンを使っただけだ。俺はオートチューンを発明していないという主張のように、T-Painが音楽をダメにしたというのは、少々大げさな表現かなと思いました。


いつの時代も、どこの場所でも、「出る杭は打たれる」ということでしょうかね。


そんなT-Pain, 現在は人の目を気にせず好きな事をやるという精神性に目覚め、自身最大のヒット曲"Buy U a Drank (Shawty Snappin') feat. Yung Joc"をセルフ・サンプリングした"I Like Dat"を発表。


Kehlaniとの共演でも話題となったこの"I Like Dat"で、T-Painはオートチューン全開で元気よく弾けています。



T-Pain & Kehlani

I Like Dat

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