なぜMichael Jacksonが書いたRalph Tresvant「Alright Now」はシングル化されなかったのか。
- R&B SOURCE

- 6月19日
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更新日:3 日前

Michael Jacksonが書いた「Alright Now」
New Editionでの活躍を経て、Ralph Tresvant(ラルフ・トレスヴァント)が'90年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『Ralph Tresvant』
このアルバムには、「Sensitivity」「Stone Cold Gentleman」「Do What I Gotta Do」など、当時のチャートを賑わせたR&Bヒットが収録。
Ralph Tresvant - Sensitivity
そして、これらRalphのキャリアを代表する楽曲の陰に隠れるかのように、アルバムの後半にひっそりと収録された楽曲「Alright Now」
この曲は、あのMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)がソングライティングを担当したことで知られる、Ralphが歌う隠れた名バラードのひとつ。
Michaelが書いた楽曲でありながら、なぜ「Alright Now」はシングル化されなかったのか。
Ralph Tresvant - Alright Now
元々はThe Jacksonsのアルバム用に制作された楽曲
「Alright Now」は、'83年にMichael Jacksonがキーボーディスト/プロデューサーのJohn Barnes(ジョン・バーンズ)と共同で制作した楽曲。

時期的には、The Jacksons(ジャクソンズ)が'84年に発表するアルバム『Victory』の制作期間で、Michaelはこのアルバムへの収録を目指して「Alright Now」を制作。
しかし当時のMichaelは、'82年リリースのアルバム『Thriller』の爆発的ヒット直後。
世界で最も注目を集めるポップスターとして、まさに多忙を極めていた時期。
『Victory』は、Jackson兄弟6人が全員参加した唯一のアルバムだった一方、制作時はメンバー間の意見の不一致や、それぞれのソロ活動(特にMichaelの『Thriller』の世界的ヒット)が重なり、非常に混沌としたセッションだったという。
結果として、Michaelが『Victory』にメインで関わった楽曲は、Mick Jaggerとのデュエット曲「State of Shock」と、「Be Not Always」「The Hurt」の3曲のみ。
この激しい選考の中で、Johnと共作していた「Alright Now」はアルバムに未収録となり、お蔵入りとなってしまったという経緯。
The Jacksons - Victory
そして'90年、Ralphがソロ・アルバムを制作する際、この曲の共同制作者であるJohnがプロデューサーとして参加。
彼は、アーカイブに眠っていたこの強力な未発表曲が「Ralphの甘くスムーズなボーカル・スタイルに完璧にマッチする」と考え、Ralphに提供したという流れ。
しかし一方で、Michaelの未発表曲を別レーベルのアーティスト(Ralphは[RCA Records]所属)のアルバムに収録するには、Michael本人および彼の管理チーム(Michaelは[Epic Records]所属)の正式な許可が不可欠。
もしMichael側が拒否していれば、アルバムに収録することすら不可能な状況。
Michael自身が「New Editionをリスペクトしているから、Ralphにこの曲をあげるよ」と、直接語ったインタビューや公式声明は残っておらず。
しかし、New Editionはもともと「80年代のJackson 5」を目指して結成されたグループであり、Ralphはその中でMichaelと同じリード・ボーカルを担当。
そのため、自らのスタイルを正統に受け継ぐRalphに楽曲を託すことは、Michaelにとってごく自然な流れだったと考えられ、つまり、「Michaelが自分のために書いた極上の1曲が、巡り巡って最高の相性を持つRalphのもとへ渡った」というのが、この曲の提供の真相と言えそう。

なぜ「Alright Now」はシングル化されなかったのか
では、なぜ「Alright Now」はシングルカットされなかったのか。
まず考えられるのが、「シングルにしないこと」がMichael側の許可条件だった可能性。
'90年当時、Michaelは[Epic Records]の絶対的なトップ・スターであり、'91年にリリースされる『Dangerous』の制作に向け、自らのブランディングを厳格にコントロールしていた時期。
そんな中、Michaelが書いた未発表曲を、競合レーベルである[MCA Records]がMusic Videoやラジオ・プロモーションを伴う「シングル」として大々的に展開することは、[Epic Records]にとって「自社の最大の資産を他社にタダで利用され、利益を持っていかれる行為」と映っても不思議ではない話。
そのため、Michael本人や彼の管理チーム、そして[Epic Records]が「アルバムのCD限定ボーナストラック(あるいは単なる収録曲)としてひっそり入れるだけなら許可するが、シングルカットしてMichaelの名前を商業的に前面に出すプロモーションは認めない」という条件をつけた、というのは音楽業界ではごく一般的に行われる契約の形。
事実、「Alright Now」はLP盤には収録されず、CDにのみ収録されたボーナス・トラック扱いの楽曲。
音楽業界のセオリーとして、シングルは、すべてのメディア(LP、カセット、CD)に共通して収録されている「アルバム本編のコアな楽曲」から選ばれるのが原則。
一部のCD購入者しか持っていない楽曲をシングルにしてしまうと、LPやカセットを買ったファンが「シングル曲がアルバムに入っていない」という不満を持つ原因にることから、「Alright Now」はシングルカットの対象外になったと言えそう。
Ralph Tresvant - Ralph Tresvant
もうひとつの可能性が、Ralphが「Michaelの名を利用して勝負したくない」と考えた可能性。
彼にとってこのデビュー・アルバムは、New Editionの看板を外し、「1人の独立したシンガーとして世間に実力を証明する」ための、極めて重要な勝負作。
もし「Alright Now」をシングルに選んだ場合、世間やメディアの注目は「Ralphのソロ曲」ではなく、「Michaelが書いた曲」という話題一色になってしまった可能性も否定できず。
Ralphは、Jam & Lewisが手がけた先行シングル「Sensitivity」が、全米R&Bシングル・チャート1位の大ヒットを記録しており、彼は「自分の歌声だけで頂点に立てる」ということを、すでに証明済み。
ここでわざわざMichaelの功績に乗っかるようなシングル戦略をとることは、彼自身のアーティストとしてのアイデンティティを薄めてしまうため、Ralph本人や制作陣がそれを嫌い、あくまで「アルバムの中の隠し球」として留めておきたかった、という心理は十分に働いていたはず。
だからこそこの曲はシングル化されず、現在の「知る人ぞ知る名曲」という絶妙なポジションに落ち着いたと言えそう。






































