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Michael Jackson『Thriller』から現代R&Bまで。なぜ「横たわりポーズ」は、R&Bを象徴するビジュアルとなったのか。

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 6月23日
  • 読了時間: 4分
Michael Jackson『Thriller』をきっかけに、R&Bを象徴するビジュアルとなった「横たわりポーズ」

なぜR&Bシンガーたちは「寝そべる」のか?


音楽界には、一目見ただけで特定のメッセージを伝える「型」が存在。


その最たる例が、アーティストが片肘をついて横たわる「リクライニング・ポーズ」

Michael Jacksonが'82年に発表した歴史的名盤『Thriller』
Michael Jackson

Michael Jacksonの歴史的名盤『Thriller』のアートワークで世界的に知られるようになって以降、このポーズはJoeやR. Kelly、さらにはChris Brown、Eric Bellinger、Durand Bernarrといった現代のR&Bシンガーたちにも繰り返しオマージュされてきた、R&Bシーンを象徴する定番のポーズ。

Joeの最高傑作のひとつ『My Name Is Joe』
Joe
Chris Brownが2026年にリリースしたアルバム『Brown』
Chris Brown
2020年代のR&BシーンをリードするDurant Bernarr
Durand Bernarr

『Thriller』のインパクトがあまりにも強かったため、このポーズはMichaelがその先駆けと思われがちながら、ルーツを辿れば、『Thriller』以前からブラック・ミュージックの世界で受け継がれてきた「伝統的なスタイル」



Aretha Franklin - La Diva (1979)

Aretha Franklinが'79年に発表したアルバム『La Diva』

Aretha Franklinが'79年にリリースしたアルバム『La Diva』で、すでに自信に満ちあふれたリクライニング・ポーズを披露。



Teddy Pendergrass - It's Time For Love (1981)

Teddy Pendergrassが'81年にリリースしたアルバム『It's Time For Love』

フィラデルフィア・ソウルの象徴であり、圧倒的なセックス・シンボルであったTeddy Pendergrassは、『Thriller』の1年前に発表した『It's Time for Love』のアートワークで、セクシーな表情を披露。



そして、この「横たわりポーズ」をシーンにおける特別なアイコンへと押し上げたのが、Michaelが'82年に発表した歴史的名盤『Thriller』


Michael Jackson - Thriller

『Thriller』は全世界での推定売上が約6,700万枚〜1億枚以上とされ、'85年にギネス世界記録に認定されて以来、その座を維持。


また全米アルバム・チャートでは通算37週間にわたり1位を獲得し、収録された全9曲のうち7曲がシングルカット、さらにそのすべてが全米シングル・チャートでトップ10入り。


加えて’84年のグラミー賞では史上最多となる8部門を受賞するなど、他の追随を許さない圧倒的な記録を残した、人類史上最も大成功を収めたアルバムのひとつ。


そんな歴史的背景もあり、『Thriller』以降このポーズは「成功」「名声」「スター性」、そして音楽界の頂点を象徴するビジュアルへと昇華。


Lionel RichieやLuther Vandrossといった大物たちもこぞってこのポーズをなぞり、R&B界の「お決まりの型」として完全に定着し、現在に至るまで数え切れないほどのR&Bアーティストたちによってオマージュされ、ジャンルを象徴するアイコンとして受け継がれていくことに。

R&Bシーンを代表する実力派Luther Vandross
Luther Vandross

そして『Thriller』のリリースから数十年経った現在も、R&Bシンガーたちがこのポーズに魅了されるのには、いくつかの理由があると考えられ、そのひとつが「タイムレスな魅力」


派手なグラフィックや奇をてらった演出は、時代が経つと古びてみれることもある一方、シンプルな背景の前で横たわるリクライニング・ポーズは、ある意味トレンドに左右されにくい「ミニマリズム」の境地とも言えるデザイン。


だからこそアーティストたちは、自分の作品に「10年、20年経っても色褪せないクラシックの風格」を与えるために、この普遍的な構図を選んでいるのではないかと推測。

R. Kellyの名曲のひとつ「Half On A Baby」
R. Kelly

もうひとつの理由は、「色気を引き出す究極のアングル」


立ち姿のポーズが「戦闘モード」や「力強さ」を表すのに対し、横たわる姿勢は本来、最も無防備な状態。


しかしR&Bシンガーたちは、その無防備な体勢のまま、鋭く自信に満ちた視線をカメラに投げかけ、「完全にリラックスしているのに、圧倒的なカリスマ性で支配されている」というギャップを演出。


R&Bという音楽ジャンルは、伝統的に「夜のムード」「愛の営み」「ロマンス」を歌うカルチャー。


直立して歌うポップスやロックのシンガーとは異なり、R&Bシンガーにとって「寝そべる」という姿勢は、自分のプライベートな空間にリスナーを招き入れるような親密さを意味し、このポーズは、「甘くセクシーなラブソングを届ける」というメッセージを視覚的に伝える象徴的な表現として機能しているといえそう。

お蔵入りしてしまったBabyfaceの未発表アルバム『A Love Story』
Babyface

しかしこのポーズを採用した瞬間、アーティストは無意識のうちに、Michael Jacksonや『Thriller』と比較されるという大きな期待を背負うことになりかねず、そのため単なるオマージュでは成立せず、作品全体のクオリティが問われる「緊張感」を伴うビジュアル。


もしアルバムに収録された楽曲の完成度が伴っていなかったり、シンガーとしての表現力や世界観が追いついていなければ、このポーズはたちまち逆効果になる可能性もあり、つまり現代のアーティストが『Thriller』の遺伝子を継ぐこのポーズを用いるということは、「どれだけ批判されても成立させられるだけの最高傑作を提示する」という覚悟そのものを、無言で宣言する行為ともいえそう。

数々の歴史的記録を打ち立てたMichael Jacksonの『Thriller』
Michael Jackson

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