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「Untitled (How Does It Feel)」が、D'Angeloのキャリアを終わらせたのか。「この曲がどんな影響をもたらすか知っていたら、彼はやらなかったと思う」

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 8月14日
  • 読了時間: 4分
D'Angeloの代表曲のひとつ「Untitled (How Does It Feel)」

楽曲そのものを凌ぐ話題性だった過激なMusic Video


記念すべき新時代の幕開けとなった2000年を迎えて間もない1月10日、D'Angeloはシングル「Untitled (How Does It Feel)」をリリース。


D'AngeloとRaphael Saadiqが作詞作曲を手掛けたこの曲は、Princeへのトリビュートとして制作され、Princeへの明確なオマージュを感じさせる官能的なファルセット・ボイスが印象的なスロウ・ジャム。


その完成度の高さは各所から評価され、2001年の第43回グラミー賞では「Male R&B Vocal Performance」を受賞し、さらに全米R&Bシングル・チャートで最高2位を記録する大ヒット。


しかし、この曲を一躍有名にしたのは、D'Angeloがこだわり抜いたサウンドだけではなく、あまりにもセクシーなMusic Video。


極限まで無駄を削ぎ落としたシンプルな構図ながら、彫刻のように鍛え上げられた褐色の肉体と滴る汗、そしてD'Angeloの身体をほぼ全裸に近い状態で映し出し、視線をD'Angelo本人へと集中させる過激な演出。


これが楽曲そのものを凌ぐほどの大きな話題を呼ぶことになり、そしてその後のD'Angeloのキャリアを大きく揺るがしていくことに。


D'Angelo - Untitled (How Does It Feel)



「世間の記憶に残ったのは『裸になった男』としてのD'Angeloだった」


2000年当時のMusic Videoといえば、Janet Jackson「Doesn't Really Matter」に見られるように、高額な予算を注ぎ込んでCGを駆使した、近未来をイメージさせる演出が主流。


そんなミレニアム期のトレンドに対する、まさにアンチテーゼとも呼べる演出をとったのが「Untitled (How Does It Feel)」


監督を務めたのは、当時D'AngeloのマネージャーだったDominique Trenierと、Keith Sweat「Twisted」、Aaliyah「One In A Million」などのMusic Videoを手掛けたPaul Hunterの2人で、撮影はわずか1日で行われたという。


このMusic Videoはもともと、D'Angeloのイメージと世間からの見られ方を変えるために、Dominiqueが考案したプロモーション戦略の一環として企画されたもの。


Music Videoのコンセプトについて、Dominiqueは「SPIN Magazine」のインタビューで次のようにコメント。

「誰であれ、その女性と一対一で向き合っているような感覚にしたかった」

結果として、このMusic Videoこそが、D'Angeloを「地球上で最もセクシーな男」とも称される、あまりにも巨大なセックス・シンボルへと押し上げた瞬間。


しかし、この世界的な熱狂こそが、天才D'Angeloをその後14年間にわたる深い精神的暗闇と沈黙の底へと突き落とす、「呪縛」へとつながってしまうことに。

「Untitled (How Does It Feel)」が、D'Angeloのキャリアを終わらせたのか。
D'Angelo

そして「Untitled (How Does It Feel)」のメガヒットと、アルバム『Voodoo』ツアーの成功。


一方、その華々しいキャリアの裏で、D'Angeloの内面は激しく摩耗。


彼が誇りを持っていたのは、R&B、ファンク、ソウルの伝統を正統に受け継ぐ「職人」としての自分であり、あくまでも彼は生粋の「ミュージシャン」


しかし、世間やメディア、そして熱狂するファンが彼に求めたのは、その研ぎ澄まされたサウンドではなく、ステージ上でシャツを脱ぎ捨てる、「セックス・シンボルとしての肉体」


ツアー中、D'Angeloが渾身のグルーヴを紡ぎ出している最中にも、客席からは「服を脱げ!」という黄色い悲鳴が飛び交うようになっていったという。


その結果、音楽そのものを聴いてもらえないという絶望感は、D'Angeloの中で日に日に膨れ上がっていくことに。


しかし、実はD'Angelo自身、そもそもMusic Videoのアイデアには消極的だったという。


『Voodoo』でドラムを担当したQuestloveは、音楽ジャーナリストToureとのインタビューで、次のようにコメント。

「'Untitled (How Does It Feel)'がどんな影響をもたらすか知っていたら、彼はやらなかったと思う」

そして、このアイデアを立案したマネージャーDominique Trenierも、後にその結果への後悔と罪悪感を告白。

「結局、世間の記憶に残ったのは『裸になった男』としてのD'Angeloだった」

「Untitled (How Does It Feel)」のMusic Videoがもたらした流れをまとめると、次のとおり。


Music Videoによって、D'Angeloの肉体が世界的な話題になる。

「最もセクシーな男」として注目を集める。

しかし、音楽ではなく肉体ばかりに注目が集まる。

D'Angelo本人が強い苦悩を抱える。

そして世間に残ったのは、「ミュージシャン」ではなく「裸の男」というイメージ。


結果的に、この曲は「究極のセックス・ビデオ」としてセンセーショナルに消費され、本来意図していたものとはあまりにもかけ離れた形で受け取られることに失望したD'Angelo。


この決定的なギャップによって傷ついたD'Angeloは、ツアー終了後にスタジオや表舞台から姿を消し、アルコールや薬物の問題、精神的なクラッシュへと追い込まれていくことに。


そして、この曲でもう1つ注目すべきなのが、楽曲のラスト。


D'Angeloの叫びとバンドの演奏が最高潮に達したまさにその瞬間、音楽はフェードアウトすることなく、文字通りブツ切りで終了。


まるで、オーディエンスを絶頂の直前で置き去りにし、永遠に満たされることのない「渇望」を表現しているかのよう。


セックスの快楽を想起させるメタファーであると同時に、当時D'Angeloが音楽業界に対して抱えていた「不満」までもが、そのまま音に宿っているようにも感じられる、なんとも意味深なエンディング。


D'Angelo - Voodoo





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