Brian McKnightが、「サンプリング」に疑問を抱いていた心境を打ち明かす。「作曲家として正当ではない」
- R&B SOURCE

- 7月6日
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新しい手法を試みたサード・アルバム『Anytime』
ほぼ全曲の作詞作曲をBrian McKnight自身が手がけた、'92年リリースのデビュー・アルバム『Brian McKnight』の時点で、彼のシグネチャー・サウンドとも言える、都会的で上品なコンテンポラリー・サウンドはすでに確立。
デビュー・アルバムをリリースした当初、アルバムの売り上げは伸び悩んだものの、4曲目のシングル「One Last Cry」が全米シングル・チャート最高13位を記録する大ヒットとなり、同アルバムは100万枚のセールスを超えるプラチナ・ディスクを獲得。
Brian McKnight - Brian McKnight
「One Last Cry」の大ヒットを受け、その雰囲気に通じるバラード路線でアルバム全体が制作されたのが、'95年リリースのセカンド・アルバム『I Remember You』
デビュー・アルバムと同様Brian自身がほぼ全曲のプロデュースを担当し、チャートの結果こそ前作を上回ったものの、セールスは約半数の50万枚でゴールド・ディスク止まり。
Brian McKnight ('92)
全米アルバム・チャート|58位
全米R&Bアルバム・チャート|17位
セールス|約100万枚
I Remember You ('95)
全米アルバム・チャート|22位
全米R&Bアルバム・チャート|4位
セールス|約50万枚
Brian自身、セカンド・アルバムの完成度は納得しているものの、過去のインタビューで次のようにコメント。
「成功の後にもう一度成功することは非常に難しい。プラチナ・ディスクの次はゴールド・ディスクだったから、一部の人達は失敗だと見做したが、俺はこのアルバムには最高の歌詞がいくつもあると思っている。『I Remember You』の擬似的な失敗がなければ、『Anytime』の成功はなかったと思う」
Brian McKnight - I Remember You
そして'97年リリースのサード・アルバム『Anytime』では、外部からプロデューサーを招くという、これまでとは違った手法を試み、以下のメンバーが『Anytime』の制作に参加。
・Puff Daddy
・Stevie J
・The Characters
・Cory Rooney
・Ron "Amen-Ra" Lawrence
・Trackmasters
・Keith Thomas
・Peter Black
『Anytime』でとったこのアプローチに対し、売上を上げるために自分本来のやり方を曲げる、いわゆる「セルアウト」を疑う声も一部で浮上。
しかし、この決断は他でもないBrian自身によるもので、過去のインタビューで彼は次のようにコメント。
「バラッド・シンガーというイメージに縛られたくなかった。俺にはもっと違うことができるし、やりたかった。俺はヒップホップも好きなんだ。R&Bアーティストとして認知されている俺にとって、ヒップホップのコミュニティに受け入れてもらう必要を感じていたし、やるからにはその道の第一線で活躍している人達と組みたかった。それに彼らとは以前からの知り合いだったしね」
Puff Daddy、Stevie Jら[Bad Boy Records]のチームが制作した「You Should Be Mine (Don't Waste Your Time) feat. Mase」が、『Anytime』からのファースト・シングルとしてリリース。
この曲は多くのラッパー達から愛されたJames Brown「I Got Ants in My Pants (And I Want To Dance)」をサンプリングした、これまでのBrianのイメージをガラリと変えたヒップホップ・ソウル。
全米シングル・チャート最高17位を記録し、'97年のビルボード年間シングル・チャートでも86位にランクインしたこの曲について、Brianは後に次のように回想。
「Puff DaddyとMaseとの協力がプロフィールを向上させ、より広い観客に露出させた」
確かな結果を残した彼らの手腕を認めた一方、この曲の魅力を引き出した「サンプリング」には懐疑的で、あくまでセールスを重視した義務的なやり方だったと主張。
Brianは過去のインタビューで次のような本音を発言。
「作曲家として正当ではない」
Brian McKnight - You Should Be Mine (Don't Waste Your Time) feat. Mase
「もしサンプリングできるなら、何も学ばなくていい」
アルバム『Anytime』でサンプリングされたのは以下の4曲で、「Jam Knock」以外はシングルカットされた楽曲(正確には「Everytime We Say Goodbye」も、Guy「Goodbye My Love」のボーカルの一部をサンプリング)。
Anytime
Meshell Ndegeocelloが'93年にリリースした「Outside Your Door」のトラックをサンプリング。
You Should Be Mine (Don't Waste Your Time) feat. Mase
Public Enemy、Ice Cubeらも使用したJames Brown「I Got Ants in My Pants (And I Want To Dance)」をサンプリング。
Hold Me
2Pacの名曲「I Get Around」のトラックをサンプリング。
Jam Knock
Vanessa Williams「Happiness」の元ネタとしてもお馴染みのNu Shooz「I Can't Wait」をサンプリング。
これらのサンプリング曲が話題となり、『Anytime』は全米アルバム・チャート最高13位を記録し、そして全米R&Bアルバム・チャートでは自身初の1位を獲得。
また、200万枚以上を売り上げてダブル・プラチナを達成。
Brian McKnight - Anytime
しかし当のBrian McKnightは、「サンプリング」という作曲手法そのものに対して一貫して疑問を抱いており、過去のインタビューで次のような持論を展開。
「もし自分の思い通りに出来たのなら、誰の曲もサンプリングはしなかった。他の誰かの曲をサンプリングして、その人に曲の一部を与えるなら、作曲家として正当ではないと思う。その代わりに、原曲を歌うアーティストが全てのクレジットを得るカバーをするほうが、作曲家として妥当だと感じる。サンプリングは、人々から創造性を奪っているとも思う。もしサンプリングができるなら、俺は演奏の仕方を知らなくてもいいし、何も学ばなくてもいい。ただ誰かの曲を使い、自分の名前を付ければいいからね。俺はこのやり方に賛成出来なかったけど、それでも探求したことはあるよ。だって、長い物には巻かれた方がいいだろ」
16歳の頃から作詞作曲を行ってきたBrianは、当時から1日中どこにいても作曲が出来る状態を維持し続けているという。
常に複数の楽曲アイデアを頭の中にストックし、レコーディングの場でそれらを形にしていくスタイルが彼の作曲手法。
その創作スピードは群を抜いており、デビュー・アルバム制作時には約150曲もの楽曲を1人で書き上げたというほど。
アーティストとして非凡な才能を持つ天才肌ゆえに、Pro ToolsやAuto-Tuneといったデジタル・ツールの普及も音楽の質を下げた要因の一つだと語るなど、テクノロジー主導の制作手法に対しては批判的な立場(Brian自身はピアノやギターを用いた作曲スタイルを好むため)。
一方で、米ニューヨーク出身という背景もありヒップホップへの理解は深く、サンプリングそのものを全面的に否定しているわけではないとのこと。
「例えば、A Tribe Called QuestのAli Shaheed MuhammadやDJ Premierらがサンプリングしたトラックは、非常にクリエイティブだと思うし、ただの平凡な模倣ではなかった。分かるよね?俺は他のどのエリアよりもニューヨークのヒップホップに傾倒する傾向があるんだ。なぜなら、彼らが作り上げたトラックは、とても創造性を感じたからね」
Gang Starr - Mass Appeal
原点回帰して誕生した最高傑作『Back At One』
サンプリングに関して独自の見解を示したBrian McKnightは、デビュー時から『Anytime』まで在籍していた[Mercury Records]を離れ、新天地[Motown Records]に移籍。
そして'99年にアルバム『Back At One』を発表。
一部Rodney Jerkinsらを迎えた楽曲を収録しつつも、このアルバムではサンプリングを封印。
デビュー当時と同様に、Brian自身がアルバム収録曲の大半を作詞作曲するスタイルへと回帰。
その結果、全米アルバム・チャートで最高2位を記録し、累計300万枚以上を売り上げるトリプル・プラチナを達成。
Brian McKnight - Back At One
このアルバムに収録されたのが、Brian不動の代表曲「Back At One」で、シンプルなカウントアップ形式で、「愛の手順」を描いたR&B史に残るラブ・ソングの名曲。
「1つ、君は夢が叶ったような人だ。
2つ、ただ君と一緒にいたい。
3つ、はっきりと分かるよ、僕には君しかいないんだ。
そして4つ、1〜3を繰り返すんだ。
5つ、そうやって君を惚れさせる。
これをやり遂げたら、また最初に戻って始めるんだ」
その分かりやすく普遍的なメッセージは幅広い共感を呼び、「全米中の女性が就寝前に聴いていた」といったエピソードまで語られるほどの大ヒット曲に。
Santana「Smooth feat. Rob Thomas」に阻まれたものの、全米シングル・チャート8週連続2位という記録を残し、Brianは当時の状況を次のように回想。
「『Anytime』が火花だったなら、『Back at One』で爆発した。あの時、俺は聴衆が聴いたり見たことがない、前例のないことをやったんだ。ポップ・ラジオに登場した若い黒人のバラード・シンガーは、これまでに何人いただろうか?」
Brian McKnight - Back At One
ちなみに『Anytime』のリリース以降、Brianはサンプリングを一切封じたわけではなく、2005年の「Grown Man Business」ではMarcus Millerの「Much Too Much」を、2006年の「Unhappy Without You」ではBilly Cobhamの「Heather」をそれぞれ使用。
自身の「独創性」へのこだわりを軸にしながらも、サンプリングを柔軟に取り入れる姿勢を見せることに。





















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