R&B SOURCE編集部
Jon B.▶︎▶︎2パックと共演した伊達男。"Are U Still Down?"は、何故生前にリリース出来なかったのか?

2Pacがコ・プロデュースした唯一のR&Bシンガー
Babyfaceを迎えた'95年リリースのデビュー・シングル"Someone to Love"が、全米シングル・チャート10位といきなりの大ヒットを記録したJon B.は、Babyfaceと彼の妻Tracey Edmondsが立ち上げた[Yab Yum Records]の第1弾アーティストとしてデビューした、甘い歌声とルックスで人気を集めた正統派R&Bシンガー。
Someone to Love feat. Babyface
Jon B.
iTunes: https://apple.co/3oSylm5
デビュー後は華やかな経験ばかりとはいかず、離婚、スタジオの火事など幾多の困難を経験するも、「死ぬほどの苦痛をのぞけば、苦悩は人を強くする」と、ポジティブなマインドで音楽シーンを生き残ってきました。
そんなJon B.といえば、あの2Pacがコ・プロデュースした唯一のR&Bシンガーとしても知られていますが、2Pacと共演した時のことを、過去のインタビューで以下のように語っています。
「2Pacとのレコーディングは、俺にとって重要なターニング・ポイントだった。
彼は音楽に全てを捧げてきたし、そんな素晴らしいアーティストが俺の曲に力を貸してくれて、俺の才能をリスペクトしてくれて、彼と同じスタジオにいるだけで幸せだった。
永遠に忘れられない思い出さ」
Jon B.は、2Pacの死後に"Are U Still Down feat. 2Pac"を発表し、同シングルは全米シングル・チャート最高29位を記録しました。
Are U Still Down? feat. 2Pac
Jon B.
produced by Johnny Jackson, 2Pac
iTunes: https://apple.co/3DFykbk
Jon B.のファンだった2Pac
Jon B.は、2Pacとのエピソードを「VladTV」のインタビューにて以下のように答えています。
「俺の友人が2PacのMVの撮影を担当していたんだけど、彼が"How Do U Want It feat. K-Ci & JoJo"のMV撮影時に俺に電話をかけてきて、『誰が君のファンだか分かる?今直ぐここに来なきゃダメだ』って言われたんだ。
How Do U Want It feat. K-Ci & JoJo
2Pac
produced by Johnny Jackson
iTunes: https://apple.co/3xc0NTP
俺は直ぐに2Pacの撮影現場に向かい、撮影場所に着いたら軍事基地みたいに何度もバリケードを通って、IDを見せて、ボディ・チェックを受けて、鉄の探知機でチェックされて、中に入るだけで大変だったよ。
ゲートでDJ Eric B.(Eric B. & Rakim)に会って、俺はその時自分の車に乗って自分のビートを聴いていたんだけど、彼が『この曲は何?』って聞いてきたから、少し車に乗ってもらってビートを聴いてもらったんだ。

そしたら『このビートは絶対に2Pacに聴かせなきゃダメだ。曲を持っていきな』って言われて、同じビート・テープを2Pacに持っていった。
2Pacと会って、他にもK-Ci & JoJo, Johnny Jacksonとか色々な人に会った。
そして"Are U Still Down"のビートは、その時にいたJohnny Jacksonが作ったんだ」

"Are U Still Down?"は、元々は2Pacの為に作られた楽曲だった
「"Are U Still Down?"は、元々Johnny Jacksonが2Pacの為に作った楽曲なんだ。
この話のエピソードは、"How Do U Want It"のMVの撮影現場で俺のビートを2Pacに聴いてもらって、そしたら彼は俺のビートでフリースタイル・ラップをはじめたんだ。
その場所にはSway & King Techもいて、彼らが目撃者だよ。
それで俺は2Pacに『一緒にスタジオに行きませんか?』って言ったんだ。

その光景を見ていたK-Ci & JoJoは、これから何が起こるか分かっていたから『ほら来たぞ』っていう感じだった。
いつか実現すればいいなと思っていたから、直ぐに実現することはあまり期待していなかった。
でも、家に帰ってからは本当に実現するかもしれないって考えていたよ。
その2週間後、2Pacから電話がかかってきてスタジオに行ったんだけど、駐車場にロールス・ロイスかベントレーが停まっていて、運転席に俺のデビュー・アルバム『Bonafide』が置いてあったんだ。
それで気がついたんだ、『この車は2Pacの車だ』って。
あれは本当に嬉しかったし、今でもあの光景が脳裏に焼き付いている。

それでスタジオに入って、俺のビートを聴かせてくれって言われた。
その後に2Pacが『俺のビートもかけさせてくれ』って言って、その時にかけたビートが"Are U Still Down?"のビートだった。
俺はこのビートを聴いた瞬間に『これだ』って思った。
俺がかけようとしていたビートはもういいから、これにしようって言って、直ぐに"Are U Still Down?"の制作に取り掛かった。

3時間くらい作業して、曲のほとんどを仕上げた。
当時、R&Bとヒップホップのコラボレーションは凄く珍しかった。
Mary J. BligeとMethod Manのような例もあったし、もっと早い時期にはJody WatleyとRakimのコラボレーションもあったけど、俺と2Pacの曲は雰囲気が異なった。
ラップのアグレッシブさとボーカルの柔らかさが隣り合った曲っていうのは、本当に聴いたことがなかった。
"Are U Still Down?"の後に、みんなが同じことをやり始めた。
この曲に惹きつけられたんだ。
『俺たちがこの流れを作った』ということを言いたいわけじゃないけど、それだけ斬新だったんだ。
それで完成した曲をスタッフに聴かせたんだ。
そしたら『この曲はリリース出来ない』って言われた。
この時、2Pacはまだ生きていた。
そして彼は亡くなったんだ」

何故、2Pacの生前に"Are U Still Down?"はリリース出来なかったのか?
「スタッフは、俺たちが全く違う雰囲気を持ったアーティストということを気にしていたんだ。
俺はクリーンで愛に溢れたロマンティックな雰囲気のR&Bシンガーで、反対に2Pacの生き様は、分かるよね?
『どうやってこの異なる2つのバイブスを組み合わせるんだ?』って。
"Someone to Love"をBabyfaceと歌ったような光景を、彼らは想像出来なかったんだ。
でもそういうことじゃなくて、これは俺が本気でやったことだし、実際に2Pacは俺を気に入ってくれてコラボレーションしたんだ。
『誰かに理解されるかどうかは問題じゃない。時が来たら理解されるようになる。だからこれは形にするべきなんだ。見てれば分かるよ』っていう時に、彼は亡くなってしまった」
Jon B.の願いも虚しく2Pacの生前にリリース出来なかった"Are U Still Down?"でしたが、2Pac没後の'97年に発表されたJon B.のセカンド・アルバム『Cool Relax』に収録されました。
Cool Relax
Jon B.

Donell Jonesとの共演に「まるで"Are U Still Down?"をレコーディングした時のことを思い出すよ」
2Pacの他にも、Nas, AZ, Paul Wallといった著名ラッパー達と共演し、またBabyfaceの他にも、Faith Evans, Tankらと共演してきたJon B.でしたが、2019年にDonell Jonesとの共演曲"Understand"を発表。
両者は'90年代中期にデビューしたほぼ同期で、これまでに各所でのライブで共演することはあったものの、楽曲でコラボレーションをするのは今回が初めて。
2018年11月に行われた「Soul Train Awards 2018」にてパフォーマンスを行った両者でしたが、今回のシングルのコラボレーションの話は「Soul Train Awards 2018」開催の数ヶ月前に、Jon B.からDonell Jonesへ共演の話を持ちかけたそうです。
「これまでにDonellと何度もショーで共演し、その度にコラボレーションの提案をしたが、今までこの話が実現することはなかった。だから今は本当に興奮しているし、まるで"Are U Still Down? feat. 2Pac"をレコーディングした時のことを思い出すよ」と、Jon B.は念願のコラボレーションが実現し興奮を抑えられない様子。
両者がデビューした'90年代の雰囲気を思わせる、オーセンティックなスロウ・バラードとなりました。
Understand feat. Donell Jones
Jon B.
iTunes: https://apple.co/3i0lxZf