
全ての始まりはこの"Smokin Out the Window"から
「この女は俺に家賃を払わせて、旅行代まで払わせる。
首にも手首にもダイヤを身につけて。
それなのに、俺はここで独りぼっちさ。
俺の心はもう冷え切っているさ、こんなところで俺は。
窓越しにタバコをふかしているぜ (Smokin Out the Window)
『なんで彼女にここまでされなきゃいけないんだ』って歌いながら。
彼女は俺だけのものだって思っていたけど、俺は勘違いしていたよ。
彼女がみんなのものだったなんてな」
男を振り回す悪女にひっかかった、やるせない気持ちを歌った"Smokin Out the Window"は、Bruno MarsとAnderson .PaakによるユニットSilk Sonicのデビュー・アルバム『An Evening With Silk Sonic』から3曲目のシングルとしてリリースされた楽曲。
'70年代の作風を現代に再現して話題を集めたこの曲、実はSilk Sonicが1番最初に作った楽曲だったとのこと。
Smokin Out the Window
Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic
iTunes: https://apple.co/3DHPHbz
コロナ・パンデミックが起こらなかったらSilk Sonicの結成は無かった?
2017年3月から2018年12月まで行われたBruno Marsのワールド・ツアー『24K Magic World Tour』にて、欧州地域のオープニング・アクトを担当したAnderson .Paak。
このツアーがきっかけで意気投合した2人は、ツアー後にスタジオでセッションを重ね、お互いの恋愛観などを冗談交じりに話しながら曲を作っていくことに(ちなみに、当時スタジオにはNile RogersやDisclosureのGuy Lawrenceもいたとのこと)。

そして『24K Magic World Tour』が2018年末に終了し、後にSilk Sonicと名付けられる彼らのプロジェクトは直ぐには形にならなかったものの、コロナ・パンデミックで自宅待機要請が出る前の2020年初頭に、Bruno Marsは次のように伝えて、Anderson .Paakをスタジオに呼んだとのこと。
「なぁ、あの曲を完成させたいんだ」
「あの曲」とは、正に後の"Smokin Out the Window"のことで、実はこの曲はBruno Marsがツアー中に思いついたアイデアだったようで、ツアー中に誰かがふと口にした「Smokin Out the Window」というフレーズが耳に残り、その結果冒頭に記した「切ないけど同情してしまう、ストレスの溜まった空想の面白い男」というテーマの歌詞が出来上がったという流れ(Bruno Marsに呼ばれた日はAnderson .Paakの誕生日だったようで、「俺は酔ってるぞ!どういうことだよ、マジかよ!」という具合で、かなり酔った状態でスタジオに来たとのこと)。
曲作りのセッション中は、「俺こそR&Bのキングだ!俺が今一番ホットじゃないって言ってみろよ!」と、酔った勢いでAnderson .Paak節を炸裂させていたようで、しかし曲を書き始めると2人は競争心と仲間意識を持ち、互いを高め合いながら曲作りを進めたとのこと。
しかし、世界はコロナ・パンデミックの影響であらゆる活動が停止せざる得ない状況だったことから、2人は当時の心境を「Rolling Stone」のインタビューにて次のようにコメント。
「世の中は暗く落ち込んだ状況になってしまったけど、もしパンデミックが起こらなかったら2人は別々の活動に打ち込み、ツアーに出ていたかもしれないし、そうなっていたらSilk Sonicの結成もなかったかもしれない」
世界中のアーティスト達も自由を制限された時期だっただけに、結果スタジオ内で長い時間を共にした両者は、この時期にアルバムの制作を進め、そして一番最初に"Smokin Out the Window"を完成させ、Silk Sonicは正式に始動することに。
日本人ヴィオラ奏者が再び
Silk Sonicのファースト・シングルは、2021年3月にリリースされた'70年代風のロマンティックなバラード"Leave the Door Open"で、彼らはこの曲でいきなりグラミー4部門を受賞するという歴史的快挙を達成。
実はこの曲には、日本人のヴィオラ奏者Yoshihiko Nakano氏が演奏で参加しており、今回の"Smokin Out the Window"にも同氏はヴィオラの演奏で参加。
Leave the Door Open
Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic
iTunes: https://apple.co/3DHPHbz
そして、当初は2022年のリリースが予定されていたSilk Sonicのアルバム『An Evening With Silk Sonic』は、2021年11月12日に前倒しでリリースされ、初週で全米アルバム・チャート2位を記録。
記述のシングル曲はもちろんのこと、Bruno Mars"24K Magic"を手がけたプロデューサーStereotypesが手がけた"After Last Night"には、Silk Sonicの名付け親であるBootsy Collinsが参加し、哀愁感を漂わせながらもダイナミックなコーラス・パートのメロディに引き寄せられるスロウ・バラード"Put On a Smile"には、Babyfaceがソングライターで参加。
"777"以外の全楽曲は、Bruno Marsがラブ・コールを送ったプロデューサーD'Mileがプロデュースを担当し、"777"を含む全曲のプロデュースをBruno Marsが担当。
An Evening With Silk Sonic
Bruno Mars, Anderson .Paak, Silk Sonic
iTunes: https://apple.co/3DHPHbz