新しい音楽の作り方として注目を集める「ビート・リーシング」
2018年にラッパーLil Nas Xが発表したシングル"Old Town Road"が、全米シングル・チャート史上最長となる19週連続1位という快挙を達成し大きな話題となりました。
Lil Nas X
Old Town Road
iTunes: https://apple.co/34Chqy2
全米シングル・チャート19週連続1位という記録は、以下の人類史に残る歴史的名曲の記録をも上回るとんでもない偉業。
・Elvis Presley - Hound Dog (11週連続1位)
・Eminem - Lose Yourself (12週連続1位)
・Wiz Khalifa - See You Again feat. Charlie Puth (12週連続1位)
・Whitney Houston - I Will Always Love You (14週連続1位)
・Mark Ronson - Uptown Funk feat. Bruno Mars (14週連続1位)
・Mariah Carey, Boyz Ⅱ Men - One Sweet Day (16週連続1位)
そんな歴史に名を刻む偉業を達成したLil Nas Xの"Old Town Road"ですが、実はこの曲のビートは、なんとオンラインにてわずか30ドルで販売されていたビートを購入して作られた楽曲でした。
これは「ビート・リーシング」と呼ばれる作曲手法で、インターネット時代の新しい曲作りの形として注目されています。
ビート・リーシングは、一言で「ビートをリースする(借りる)」ということ(購入する場合も含む)。
例えば、人脈も経験もないけどシンガーになりたい人が、1つの曲を作る際に必要な「メロディ、歌詞」は自分で考えることが出来ても、ビートを作ることが出来ないと仮定した場合、有名プロデューサーやビート・メイカーからビートを提供してもらうことは難しくても、このビート・リーシングを利用してビートをリース(購入)すれば誰でも直ぐに曲を作ることが可能に。
曲を作る際に最も専門的な技術を要したビート制作を、ビート・リーシングという概念によって誰でもアウトソーシングが可能になり、曲作りにおけるハードルが一気に下がったことが、ビート・リーシングが世界中で注目された大きな理由の1つ。
現在、世界中のビート・メイカー達が制作したビートがオンライン上で無数にリース(購入)可能な為、有名アーティスト達もこのビート・リーシングを使用して楽曲を制作しているほど。
もちろん、ビート・リーシングによる恩恵は利用者のみというわけではなく、ビートを提供するプロデューサーやビート・メイカー達へもたらしたのが、スピーディーな代金の受け取りシステム。
これまでは、プロデューサーやビート・メイカーが仮に有名アーティストにビートを提供したとしても、その曲がいつリリースされるか不透明だったり、またリリースされたとしても曲の印税を受け取るのは当分先の話だったりという従来の流れから一変。
まるで本や家電をオンラインで買うような感覚でビートの貸借(売買)が行われ、ビートがリース(購入)されたと同時に即座に代金がビートの提供者へ振り込まれるという仕組みは、プロデューサーやビート・メイカー達にとっての新しい収入源として、その可能性を大いに広げました。
違う曲なのに同じビート
ビート・リーシング時代を象徴する特徴の1つが、違う曲なのに全く同じビートで作られた曲を見かけるという現象。
例えば、以下の3曲は全て同じビートを使って作られた楽曲です。
Jae.T
Tell Me What To Do
iTunes: https://apple.co/3ryLfXR
Jakodie
I'm Gonna Make You Mine
iTunes: https://apple.co/3GKpEC1
Jay McCoy
We On feat. Mistah F.A.B.
iTunes: https://apple.co/3LVYOtK
このビートは、Robin Wesleyというビート・メイカーが、'80年代後期に世界中で大流行したニュー・ジャック・スウィングをイメージして作った"New Jack Swing"というビートで、上記の3アーティストは「Robin Wesleyの"New Jack Swing"というビートを使用して楽曲をリリースした」という流れになります。
Robin Wesley
New Jack Swing
予算や用途に応じてリース(購入)が可能なビート・リーシング
オンライン上で貸借(売買)されるビート・リーシングには様々なオプションが設けられ、利用者は予算や用途に応じてリース(購入)が可能。
例えば、試し録りをしたいから最安値だけど使用制限のあるMP3音源をリース(購入)する場合や、このビートは自分だけのものにしたいから最も高額な独占使用権を購入するなど、細かい設定はビートの提供側によって様々。
前述のJae.T, Jay McCay, Jakodieの3アーティストは、Robin Wesleyが制作した"New Jack Swing"というビートを独占では購入しなかったパターンで、ビート提供者にとっては何人もの利用者から同じ1つのビートで何度も代金を得ることが可能になり、プロデューサーやビート・メイカーにとっては新しい資産のような形に。
世界中の素晴らしいプロデューサー、ビート・メイカー達が無数のビートをオンライン上に公開していますので、これからアーティストを目指そうと考えている方は、是非ビート・リーシングも視野に入れて音楽活動をスタートしてみてはいかがでしょうか。
※ビート・リーシングを購入して曲をリリースする場合、購入するプランによって使用可能範囲が様々ですので、事前に規約を確認してから購入することをオススメ致します。
ネットで見かける「タイプ・ビート」とは?
ビート・リーシングと同じく、ネット上でよく見かける「Type Beat (タイプ・ビート)」というワード。
これは一言で「◯◯っぽいビート」を指すワードで、例えばChris Brownっぽいビートは「Chris Brown Type Beat」、Doja Catっぽいビートを「Doja Cat Type Beat」という具合に表示され、これはビートを探しているユーザーが、お目当のビートを探しやすいように工夫されたアイデア。
タイプ・ビートもビート・リーシングと同じ類で、誰でもリース(購入)することが可能。
つまりThe Weekndっぽい曲を歌いたいと考えた場合、「The Weeknd Type Beat」と検索してお目当のビートをリース(購入)すれば、誰でもThe Weekndっぽい曲が手軽に作れる時代になったということですね。
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