R&B SOURCE編集部
Lauryn Hill▶︎▶︎「一度も話はなかった」彼女は何故セカンド・アルバムを作らなかったのか?

「歴代最高のアルバム500選」の10位にランクインした傑作『The Miseducation of Lauryn Hill』
米ローリング・ストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム500選」の2020年改正版にて、第10位にランクインしたLauryn Hillのデビュー・アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』(1位はMarvin Gaye『What's Going On』)
同アルバムは全世界で1,200万枚以上のセールスを記録し、また第42回グラミー賞にて全5部門を受賞するという快挙を達成するなど、ここ日本でも安室奈美恵が「最も影響を受けた人物」としてLauryn Hillの名前を挙げるなど、日本にも多くのファンを持つカリスマですね。
'90年代に世界中のファンを虜にしたLauryn Hillでしたが、彼女が残したアルバムは『The Miseducation of Lauryn Hill』の1枚のみ。
何故、Lauryn Hillはセカンド・アルバムを作らなかったのか?
The Miseducation of Lauryn Hill
Lauryn Hill
iTunes: https://apple.co/3A0tPGN
「レーベルから一度も相談はなかったわ」
Lauryn Hillは、セカンド・アルバムをリリースしなかった経緯を以下のように語っています。
「セカンド・アルバムに関して、レーベルが私に電話をかけてきたこともないし、相談されたこともない。一度もね。
『The Miseducation of Lauryn Hill』ではある程度自由な表現が出来たけど、アルバムをリリースした後は政治、抑圧的な議題、過剰な期待、そして妨害する人達が何十人といたわ。
人々は私のアルバムに彼ら自身の成功像を重ね合わせていて、私の経験と矛盾するような事があれば、私は敵として見なされていた」
Doo-Wop (That Thing)
Lauryn Hill
iTunes: https://apple.co/3A0tPGN
「MTV Unplugged」で語った意外な言葉
様々な事情があったにせよ、グラミーで複数部門を同時受賞するほどのカリスマであれば、当時セカンド・アルバムはいかようにも作れたはず。
ヒップホップ・ユニットThe Fugeesのメンバーとしてデビューした後、ソロに転向したLauryn Hillはアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』で大成功し、誰もが羨むような富と名声を手にするも、'99年に行われた第42回グラミー賞で5部門受賞した後に、業界から忽然と姿を消すことに。
当時の年齢は20代前半で、「望むものは全て手に入れたはずのスターが、どうして行方をくらますのか?」と、多くの憶測が飛び交いましたが、2001年に2年間の沈黙を破り、再びファンの前に姿を現したLauryn Hill。
それが、米ニューヨークに本拠地を構えるTVチャンネルMTV主催の「MTV Unplugged」でした。
この放送で収録されたライブ音源は、2002年にアルバム『MTV Unplugged No. 2.0』として音源化されましたが、この時にLauryn Hillはこんな言葉を口にしています。
「以前は、みんなの為に良い格好をしていたけど、今はもうしないの。
そんなエネルギーはなくて、ごめんなさい」
MTV Unplugged No. 2.0
Lauryn Hill
iTunes: https://apple.co/3zZjR8P
セカンド・アルバムをリリースしなかった本当の理由とは?
Lauryn Hillは、「MTV Unplugged」にて次のように語っています。
「みんなLauryn Hillは知ってるわよね?
今日はLauryn Hillを見にきたんでしょ?
でもね、実はこれが初対面なの。
本当の自分にようやく気付き始めたの。
だから、本当のLauryn Hillを紹介するわ」

自分自身のことをこのように語り、『The Miseducation of Lauryn Hill』をリリースした頃の自分は、本当の自分ではなかったと告白したLayryn Hill。
それまでの人生を振り返って、承認欲求を満たすためだけに偽りの自分を演じ続けた生き方に全く幸せを感じず、そのことに苦しんでいたとのこと。
アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』をリリースした後に全てを手に入れ、でも自分自身にとって間違った方向に進んでいたと気付き、失踪した2年の間に「人生とは何か?」という壮大なテーマを見つけ、聖書などを学びながらその答えを探し求め続けたとのこと。
続けて、Lauryn Hillはこう語っています。
「私はとても意義のある教えを沢山受けて、それらが何故私に必要だったかと知った時、本当の喜びを知ったわ。
私はかつてはパフォーマーだったけど、今はもう違うの。
与えられた音楽を皆さんとシェアするだけなの」

富や名声を得て、誰もが羨むような人生を送ることこそが全てであり、それらを求めて走り続けた時期があったかもしれませんが、辿り着いたその場所には自分が望むものが何も無かった。
全てを手に入れてみて気付いた、Lauryn Hillにとっての真実。
彼女は「セカンド・アルバムをリリースしなかった」のではなく、彼女の人生にとって「セカンド・アルバムはもう必要なかった」のかもしれませんね。