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マイケル・ジャクソンの手にも渡った、クレイグ・デイヴィッドの傑作『Born To Do It』の成功秘話。「レーベルが関わる前に、基本的な作業は全て終えていたんだ」

  • 執筆者の写真: R&B SOURCE
    R&B SOURCE
  • 2月15日
  • 読了時間: 7分


Michael Jacksonの手にも渡った「史上最高のアルバムの1つ」


2000年8月、当時若干19歳という若さのCraig Davidが発表したデビュー・アルバム『Born To Do It』は、彼の地元である英国だけで200万枚近くを売り上げ、そして全世界で累計800万枚という驚異的なセールスを記録し、このアルバムが残した功績は次の通り。


全英アルバム・チャート - 1位
全英R&Bアルバム・チャート - 1位
全米アルバム・チャート - 最高11位

アルバムのリリース後、Craigは米国各地に点在する名門ライブ・ハウス「House of Blues」でライブを行い、この時Missy Elliott、Jennifer Lopez、Beyonceと言ったトップ・アーティストたちも会場に駆けつけ、そしてその中にはレジェンドStevie Wonderもいたとのこと。


当時の様子を、Craigは「The FADER」のインタビューにて次のように回想。

「俺は「House of Blues」で公演する為にロサンゼルスに行ったんだけど、初日はMissy ElliottとJennifer Lopezがいて、次の日はBeyonceがいた。彼女たちがはっきりと見えたから、俺は考えたよ。『これは本当に現実なのだろうか?』ってね。そして3日目、俺は観客を見つめながら"Walking Away"を歌っていて、その時一瞬だけライトが点灯したんだ。そしたら、観客の中にはStevie Wonderがいて、俺の曲にあわせて歌っている姿が見えた。もう何も言えなくなったよ。ライブの後にStevieと会った時、彼は『君をQuincy Jonesに紹介したいと思う』って言ってくれた。Quincyは俺のアルバムを10枚買って、友人に配っていたらしいんだけど、俺は彼に確認しなくちゃいけないと思った。『友人の1人に…?』と聞いたら、彼は俺の言葉を遮ってこう言ったんだ。『そうだよ、Michael Jacksonは君のアルバムを持っているよ』」

Criag David - Walking Away

レジェンドたちが一様に認め、そして「MTV」も「史上最高のアルバムの1つ」と絶賛した怪物アルバム『Born To Do It』は、どのようにして生まれたのか。


そのプロセスを、『Born To Do It』のプロデューサーMark Hillが「Soul Culture」のインタビューにて次のようにコメント。

「私たちには時間がたっぷりとあったから、創造的な自由が与えられ、プレッシャーも無かった」

Craig David|Born To Do It



「レーベルが関わる前に、基本的な作業は全て終えていたんだ」


Mark Hillは、Craig Davidに初めて会った時の様子を次のように回想。

「私は、地元のバンドやミュージシャンたちの活動をサポートする為に、サウサンプトンで小さなレコーディング・スタジオを経営していたんだ。私の友人が、あるプロジェクトのメンバー2人をスタジオに連れてきて、そのプロジェクトのリード・シンガーがAaron Soulというシンガーで、もう1人がCraigだった。当時、彼らは2人とも15歳で、この時に初めてCraigと出会ったんだ」
Mark Hill
Mark Hill

この時点では、CraigとMarkはまだタッグを組んでおらず、その後CraigはR&BグループDamageが'97年にリリースした"I'm Ready"のソングライティングを手がけることに。


この時、Craig Davidはまだ16歳。


Damage - I'm Ready

その後、CraigとMarkは数年ぶりにクラブで偶然再会し、この日をきっかけに2人の運命が大きく変わることに。

Craigと初めて会った時から数年が経ち、私とPete(Mark Hillと共にArtful Dodgerのメンバーとして活動していた人物)は地元のDJたちがプレイしていた楽曲のリミックスなどを作り、そして何かオリジナルの楽曲を作りたいという段階に達していた。ある夜、私達がクラブでDJをしていると、同じクラブでマイクを持ちながらDJをしているCraigを見かけ、彼のことを覚えていたので声をかけたんだ。
Artful Dodger
Artful Dodger

この時の様子を、Craigは「The FADER」のインタビューで次のように回想。

「Markは俺に『曲は持っているのかい?』と聞いてきて、俺はこう言った。『メロディと歌詞のアイデアは持っているけど、曲は持っていない』ってね。そしたら彼はこう言ってきた。『私たちは沢山の曲を持っているけど、トップライン・ライターがいないんだ。是非スタジオに来て欲しい』」

その後Craigは、いくつかの楽曲でボーカルを担当したものの、当時のMarkらは金銭的に余裕が無かったことから、Craigにボーカルの報酬を支払うことが出来ず、その代わりとして自身のスタジオをCraigへ貸し出すことを提案し、この条件を受け入れたCraigは、与えられた時間でスタジオを利用して、名盤『Born To Do It』を生み出すことに。


アルバムに収録されたほぼ全ての楽曲は、MarkとCraigの2人によって作り上げられ、Markがサウンドのプロデュースを行い、そしてCraigは歌詞やメロディを担当。


この時、Craigはどこかのレーベルと契約する予定なども全くないフリーの状態で、この環境こそ『Born To Do It』が成功した秘訣だったと、Markは次のように回想。

「『Born To Do It』を書き始めた時、レーベルやマネージャーも何も関与していなかった。私たちはレーベルと契約する前、誰もいないたった2人だけの状態で制作に取り組み、そしてアルバムの大部分を書き終えていたので、それは非常に有機的なプロセスだった。後にレコード会社にデモを持ち込んで契約を獲得しようとした時、既に"7 Days"、"Walking Away"、"Time To Party"などは完成しており、この時の音源が最終的なバージョンとしてアルバムに収録されたんだ。そしてレコード契約を得て、アルバムは当然の結果となった。なぜなら、必要な素材は既に揃っていたからね。レーベルが関わる前に、基本的な作業はすべて終えていたんだ。正直、このやり方が成功の秘訣だと感じているよ。私たちには時間がたっぷりとあったから、創造的な自由が与えられ、プレッシャーも無かった。もちろん、レコード契約が結ばれると状況は変わってしまうけどね」

Criag David - Time to Party



Rodney Jerkinsも影響を受けた2ステップ


『Born To Do It』は、[Atlantic Records]の配給のもと、[Wildstar Records]からリリースされ、レーベル・オーナーであるColin Lesterは、"Walking Away"を初めて耳にした瞬間に強い衝撃を受け、Craig Davidとの契約を決断したと、過去のインタビューでコメント。


さらに彼は、Craigの自宅が「ある物」で埋め尽くされているのを目の当たりにし、その才能が本物であると確信したという。

「彼の自宅を訪れ、床から天井まで12インチのレコードで部屋が埋め尽くされている光景を見て、彼こそが本物であり、ただの子供ではないと納得した」

この時点ではまだレーベルでの育成契約に過ぎなかったものの、後に"7 Days"を聴いたColin Lesterは、この曲がNo.1ヒットになると確信。


そして、その日の内にアルバム契約を結び、実際に"7 Days"は全英シングル・チャート1位を達成。


Craig David|7 Days

プロデューサーのMark Hillは、このアルバムの成功要因は「制限の無い自由な環境下での制作」と振り返った一方で、当時の時流を的確に捉えたこともまた大きく、それが'90年代後半に英国で大流行していた、変則的なビートが特徴の「2ステップ」を取り入れた点。


『Born To Do It』は、Craigが強く影響を受けたという米国R&Bの要素を感じさせながらも、主に2ステップにカテゴライズされることが多い。


その象徴とも言える1曲が、同アルバムからのファースト・シングルとなった"Fill Me In"で、この曲の制作時の様子を、Markは「Soul Culture」のインタビューで次のようにコメント。

「"Fill Me In"は、アルバムの初期版が仕上がった後に制作された唯一の曲だった。私は、Craigのプロジェクトと、Artful Dodgerの活動との間をつなぐような、ガラージの要素を取り入れた曲を作りたかったんだ。スタジオでのセッションには長い時間を費やし、その過程で彼のことを知るようにはなったけれど、彼の私生活について深く知っていたわけではない。彼が特定のテーマについて情熱的に歌い、詞を書くことを楽しんでいたのは明らかだったが、それが物語としてなのか、心からの想いなのかについては僕からは何とも言えない。僕はただ、メロディやその他の部分を手がけていただけだった。CraigはアメリカのR&Bの大ファンで、大量のレコードを持っていたんだ。だからいつもスタジオにやって来ては、レコードで色々聴かせてくれたり、ミックステープをくれたりしていた。それらから要素を取り出して、イギリス的に仕上げようとしていたんだ。アメリカっぽいなまりは抑えるようにね。私が編集を担当して、できるだけアメリカっぽさを減らし、別の要素も盛り込んだ曲をやらせようとしていた。最初に一緒に作った2〜3曲は、とてもアメリカ的なサウンドだったよ」

Craig David - Fill Me In

2ステップを華麗に取り入れた結果、Craigの名は「King of 2Step」という異名とともに世界中へと拡散されることになり、このサウンドに影響を受けた1人が、Brandy & Monicaの大ヒット・シングル"The Boy Is Mine"などを手がけたRodney Jerkins。

Rodney Jerkins
Rodney Jerkins

彼は、Brandyのアルバム『Full Moon』に収録された"All in Me"で2ステップにトライしており、この曲を制作した時の様子を「MTV」のインタビューにてコメント。

「スタジオに入る度に、俺は色々なところを変えるんだ。トラックを作り、全てのボーカルを入れて、トラック全体を作り直す。"All in Me"はそのようにして生まれた。この曲には何か違った要素がある。なぜなら、バラードのような雰囲気を感じさせながら、同時にアップテンポにも感じさせる。曲の中間部分で、2ステップのグルーブに入る。俺はロンドンでこの2ステップを聴いた時、まだアメリカでは認知されていなかったけど『これはヤバイ』と思ったよ。その数ヶ月後にCraig Davidが出てきて、2ステップは大ヒットした。俺はこのサウンドを適度に取り入れたかったから、曲の中間部分に入れたんだ」

Brandy - All in Me



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