Teddy Rileyが手がけたHeavy Dの「Is It Good To You」。ボーカルを担当したTammy Lucasは、なぜこの曲のMVに出演していないのか。
- R&B SOURCE

- 8月14日
- 読了時間: 4分

Heavy D版のMusic Videoに出演していないTammy Lucas
Teddy Rileyがプロデュースを手がけた、Heavy D & The Boyzによるニュー・ジャック・スウィングの名曲「Is It Good To You」
この曲でボーカルを担当したのは、Teddy Rileyの右腕として活躍し、Michael JacksonやBlackstreetらのヒット曲にも携わった、'90年代を代表する女性シンガーソングライターTammy Lucas。

しかし、この曲のMusic Videoに彼女本人は出演しておらず、映像にはモデルのCynthia Baileyらが出演し、Tammyのボーカル・パートは別の女性が口パクする形の演出。
ではなぜ、Tammyはこの曲のMusic Videoに出演していないのか。
Heavy D & The Boyz - Is It Good To You
問題視されたMusic Videoの演出
その背景には、'90年代のR&Bやヒップホップ、ダンス・ミュージックに見られた、現在から見ると少し奇妙なMusic Video制作の慣習があり、それは、実際に歌っているシンガーとは別の女性を映像に出演させ、あたかもその人物が歌っているかのように演出するというもの。
Tammyは、後にTeddyから「驚異的な才能を持つシンガーソングライター」と評価されるほどの実力を持ちながら、Heavy D版では表舞台に立つことが許可されなかった存在。
そして、これはTammyだけの特殊なケースではなく、特に有名な例が、C+C Music Factoryの「Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)」
あの強烈な女性ボーカルを実際に歌ったのはMartha Wash。

しかし、Music Videoには別の女性Zelma Davisが出演し、Marthaの歌声に合わせて口パク。
そしてMarthaはアルバムのジャケットにも登場せず。
この問題は当時「Los Angeles Times」でも報じられ、実際の歌い手と映像上の人物が異なることが大きな問題に。
C+C Music Factory - Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)
つまり、'90年代の音楽業界には、歌唱力や音楽的才能を持つ女性シンガーが「声」を担当する一方、Music Videoやジャケットではルックスやイメージを重視した別の女性が「顔」を担うケースが実際に存在。
ただし、これを「'90年代の音楽業界全体で、実力派を意図的に裏方にして、モデルを立てることが横行していた」と表現するにはやや大袈裟で、Tammyについても、彼女がMusic Videoに出演しなかった理由が「ルックスの問題だった」とする決定的な証言は、現時点で確認されていないのが現状。
Tammy本人も、「Halftime Chat」のインタビューで次のようにコメント。
「私はただフックを歌っていただけ。なぜ自分がMusic Videoに出演しなかったのかはHeavy D & The Boyzかレーベルに聞いてほしい。当時はそういうふうに物事が進められていたのよ」
こうした演出は、現在ではほとんど見られなくなったものの、その一方で、アーティスト本人ではなく、俳優やモデル、ダンサーなどを主人公に据え、楽曲の世界観やストーリーを描くスタイルが定着。
つまり、かつての「本人の代わりに別人が歌っているように見せる」という発想から、「本人とは別の人物を通して楽曲を表現する」という発想へと変化。
そしてHeavy Dのバージョンでは陽の目を浴びなかったTammyだったものの、彼女の歌声に強く惹かれ、その才能を高く評価していた人物がおり、それが当時[MCA Records]の重役を務めていた女性エグゼクティブ(おそらくKathy Nelsonという人物)。
2Pacが主演を務めた映画『Juice』のサウンドトラック制作が進められていた頃、KathyはHeavy Dの楽曲で聴いたTammyの歌声に可能性を感じ、Teddyにある提案を持ちかけることに。
当時の状況を、Tammyは次のように回想。
「Heavy D & The Boyzのバージョンが最初に出て、それから『Juice』のことを知っていた[MCA]の女性エグゼクティブが、Teddyに『サウンドトラックのために、これと似たようなものを何か作れないか』と頼んだの。そしてTeddyがそれをやった時、私に歌詞をいくつか書いてくれないかと頼んできた。最初のバージョンはHeavy Dがラップをしていて、私はただサビを歌っていただけだったから」
こうして、映画『Juice』のサウンドトラック用に「類似したテイストのR&Bナンバー」を求められたTeddyは、裏方だったTammyに「作詞」と「メインボーカル」を委ね、Heavy D版を「Is It Good To You feat. Tammy Lucas」としてセルフ・リメイク。
ラップ主体の構成から、Tammyの艶のある洗練されたメロディが全編をリードする「R&Bバージョン」がこうして完成。
そしてMusic Videoでは、Tammyが全面的にフォーカスされ、ついに表舞台に立つアーティストとしてスポットライトを浴びることに。



































