ベテラン・プロデューサーが作り続ける「時代に左右されない正統派R&B」
至る所で話題になっている「R&Bはもう死んだ」という議論に、Troy Taylorは「DJBooth」のインタビューにて次のようにコメント。
「ポップ・アーティスト達がR&Bを歌いたがっているからといって、R&Bが死んだわけじゃない。Ariana Grandeや他のアーティストもそうだけど、彼らはポップスよりもR&Bを聴いて育ってきたから、R&Bをとても大切にしている。
俺はただ、コード、アレンジメント、ハーモニーに戻りたいだけなんだ。それが俺の望みであり、俺は実際にそうしている。その準備はもう出来ているし、やる気も十分さ。R&Bが戻ってきているのは、他に行き場がないからだ。トラップ時代の人々は、今はみんな大人になっている。大人になると、もっとお金が欲しいとか、自然とあらゆることをもっと多く求めるようになる。音楽に関しても、それが自分の成長期を思い出させるようなシンプルな音楽だったら、大人としての感覚が芽生え、現代の音楽が子供っぽく感じるようになる。変化、アレンジメント、心に響く歌詞が必要なんだ」
音楽活動を始めた'90年代初頭、Troy Taylorは元々アーティストとして活動を始め、21歳の時に[Motown Records]とアーティスト契約を結ぶも、アルバム・デビュー前にアーティストの道を断念しており、その理由を次のように回想。
「アーティスト活動は、音楽制作を行うにあたって確かに影響を与えてくれた。なぜなら、俺はアーティストの心を理解できるからね。アーティストになることによって、個人としての犠牲を払わなければならないことに気付き、それをしたくないと思った。俺は自由に歩き回りたかったんだ。アーティストだからといって色々な制約を受けるのも、人々から期待するのも嫌だった。俺はそういう注目のされ方をしたくなかったから、アーティストになることをやめたんだ」
そしてプロデューサーに転向したTroy Taylorは、'90年代にプロデューサー・デュオThe Charactersのメンバーとして活動し、以下の楽曲がTroy TaylorがThe Characters時代に制作した楽曲の一例。
・Boyz Ⅱ Men - Little Things (1991)
・Keisha Jackson - Mature Love (1991)
・Wendy Moten - Step By Step (1992)
・3rd Avenue - I've Gotta Have It (1992)
・Perfect Gentleman - Work It Out (1993)
・Riff - Adjust Your Love (1993)
・Brownstone - I Can Tell You Why (1994)
・Tony Thompson - My Cherie Amour (1995)
・702 - All I Want (1996)
・SWV - Love Like This feat. Lil Cease (1997)
・Brian McKnight - Jam Knock (1997)
・Tyrese - Sweet Lady (1999)
・B2K - Why I Love You (2002)
また、Trey Songzのメンターとしても知られ、「Trey Songz」というアーティスト名は、Troy Taylorが考案したというのは有名なエピソード(Trey Songzの本名はTremaine Aldon Neverson)。
30年以上に渡り、シーンの最前線でR&Bを作り続けている大ベテランのTroy Taylorは、現在のストリーミング主体のシーンにおいて、総じて曲の長さが短くなっている傾向に対して次のように持論を展開。
「[Motown Records]全盛期の頃、そしてThe Beatlesの時代に戻らなくてはいけない。例えばThe Temptations"My Girl"、The Beatles"Yesterday"などは3分に満たないとても短い曲だった。だから今の状況は全然奇妙なことではない。これが'60年代のやり方で、時代がただ繰り返されているだけさ」
音のトレンドが著しく変化し続けるシーンの最前線で、Troy Taylorはタイムレスな正統派R&Bを量産し続けており、その一部を厳選してここで紹介いたします。
余談ですが、Troy Taylorが手がける楽曲数は膨大ながら、2019年頃の楽曲からイントロ部分に「Troy Taylor, お前は史上最高だ」という意味を込めた「TroyTaylorUdaGoat」というプロデューサー・タグが組み込まれるようになった為、Troy Taylorプロデュースの楽曲をより把握しやすくなりました。
関連記事 作曲家、ビートメイカーが曲中に埋め込んだ印「プロデューサー・タグ」
Shade Jenifer
The Two of Us (2022)
iTunes: https://apple.co/46xohno
Chris Brownに影響を受けてR&BシンガーになったというShade Jenifer。
美しいメロディが印象的な、Troy Taylor渾身のスロウ・バラード。
Bluff City
Let Me Show You (2018)
iTunes: https://apple.co/3BXdTW0
かつてメジャー・デビューしたシンガーTreVanteが在籍するR&Bグループ。
「世の女性達に多くの愛の示し方が出来る」という内容を歌ったクラシックなラブ・ソング。
Devon Culture
Levitate (2020)
iTunes: https://apple.co/3NtiEhw
Troy Taylorのレーベル[SongBook Entertainment]と契約したDevon Culture。
美しいファルセットを自在に操り、Trey Songzに負けず劣らないセクシーR&Bを次々と発表。
Tink, 2 Chainz
Cater (2022)
iTunes: https://apple.co/41mTebR
Hitmaka, Bizness Boiらと制作した、Destiny's Childの名曲"Cater 2 U"のサンプリング曲。
当初、この曲のプロデュースにTroy Taylorは参加していなかったものの、HitmakaがTroy Taylorに声をかけて共作が実現。
WanMor
Must Be Love (2023)
iTunes: https://apple.co/3Nw1Ruh
Boyz Ⅱ MenのメンバーWanya Morrisの息子4兄弟で結成されたR&BグループWanMor。
「君を見ていると僕の瞳は輝くんだ、だからこれは愛に違いない」と、ピュアな気持ちを歌うオーセンティックなラブ・ソング。
Pop Money
Love More (2023)
iTunes: https://apple.co/3PE9lOG
Nick Cannonがサポートする5人組ボーイズ・グループPop Money。
イントロから美しいメロディに引き込まれる極上メロウR&B。
Marques Houston
Because of You (2003)
iTunes: https://apple.co/4dx2eQW
The Characters解散から程なくして、Troy TaylorがソロのプロデューサーとしてMarques Houstonに提供したメロウR&B。
R&BグループTroopのメンバーSteven Russellがソングライトを担当。
Dru Hill
What You Need (2020)
iTunes: https://apple.co/3XcdnBa
クリスマス・ソングを除くと、2010年リリースのアルバム『InDRUpendence Day』以来、約10年振りのリリースとなったDru Hillの復活シングル"What You Need"。
2019年リリースのシングル"My Truch"のヒットで知られるラッパー/シンガーのBrelandがソングライトを担当。
Urban Mystic
Where Were You (2004)
iTunes: https://apple.co/4dQdK9N
Anthony Hamiltonを彷彿とさせる歌声でソウル/R&Bファンを魅了したUrban Mystic。
Naughty By NatureのKay Geeと共同プロデュースしたメロウな1曲。
プレイリスト公開中
Troy Taylorが手がけた楽曲をまとめたプレイリストを、Spotifyに公開しています。
Comments